+美篶堂日記+スタッフ+


 現役
(下からの続きです) 

原理としては、まず本文の背を少しはみ出させながら鉄板で挟み、その上からモーターで動くようになっているローラーで、ガチャ!グワワワーと押し拡げるわけです…って、おおざっぱ過ぎますね。

 本文を挟んで固定する鉄製の板はペダルを足で踏むことで行なうのですが、このときにどの程度の強さで挟めば良いかは、やはり経験が物を言います。
 
 機械の奥の方にある大きなハンドルを回すことで挟む幅(つまり本文の厚さ)を調節するのですが、しっかり体重をかけてペダルを踏み込んだときに、きつくもなく緩くもない丁度良い「挟み加減」にしなくてはなりません。なぜなら、きつ過ぎると本が必要以上に締まってしまい、緩過ぎるとローラーの潰し圧力に負けて、せっかく出した丸みが崩れてしまうからです。

 また、本の背を押し拡げるために下りてくるローラーも、本文紙の堅さによって耳の出具合が微妙に変わったりするので、そのための調節はけっこうシビアだし、なにぶん古い機械なのでクセを踏まえた上での調整もコツが必要になってきます。
 
 まぁ、それでも一旦決めてしまえば、あとは何十、何百、何千といった数の耳出しがドンドン出来るわけだから昔は多くの製本屋で行なわれていた作業ですが、現代では大きな製本所などで、一つのライン化された工程として巨大な製本機械の一部に組み込まれているのが普通です。

 ところで念のため言っておきますが、機械製本がより良い効率を求めてライン化するのは、自分も製本屋の端くれとして当然のことだと考えているし、そうしたからこそ日本にこんなにも多種多様な出版物が大量に流通することになったのだから、それは大変良かったことだと思っています。

で、まぁそれとは別に、ウチはウチでやれることをやるしか無いってことで…。(汗)

shin-1
2010/03/12 (Fri) 22:41



バッキング(耳出し)
 手作業によって丸みを出した本文を、バッキングの機械を使って「耳出し」をします。

 戦後からまだそれほど経っていなかった頃(正確な製造年は不明)に造られた、年代物のバッキングの機械がウチには2台あるのですが、みすずノートをはじめ主にウチのオリジナル製品を作るために、なくてはならない現役としていまだに活躍しています。

 が、このようにバッキングの機械が単体で仕事をしている光景は、今では滅多に無いでしょうね。(そもそも機械自体、もう新規には造られていないはずですし…)


(続きます)
2010/03/12 (Fri) 22:33


 一週間ぶりの…
 なかなか満足のいくマーブル染めができず、いろいろ試行錯誤しているうちに本業の方が忙しくなってしまい −まぁ、今も忙しいのですがー 道具や材料を作業台の片隅に放置したまま、しばらくストップしておりました。

 さて、では何故なかなか満足できなかったかといえば、最大の理由に当初懸念した文庫本の本文紙の質の問題がありました。
 一口に文庫本と言っても、それには幾つかのメーカーの様々な紙が使われているので「こうすれば、このような模様がつくし、このような色が出るはずだ」といういつもの感覚が、なかなか通用しなかったのです。

 2月24日のダイアリーでお見せした試し染めは、文庫本としてはけっこう上等な紙を使っていて、色の乗りはかなりいい方だということが、その後の更なる試し染めでわかってきました。
 特に本番…つまり合本した『コンタクト』の本文紙は、その紙の性質上なかなか思い通りの模様や色が出せませんでした。
 試し染めでは上手くいくのに、それと全く同様の配合・手順・手法でやった本番では全然思ったように色が出ない、模様がつかない。それで仕方なく付けた模様を断裁機でわずかに断ち落として、もう一回やり直す、といった作業を何度かすることになってしまいました。

 ちなみに、このように、わずかに小口を断ち落とすことを“(断裁機で)なめる”と言い、文字通りなめるように0.3〜1.0_くらいを切り落とすわけでが、ということはつまり、そのぶん本文はわずかに小さくなることを意味するので、表紙は当然それに合わせて寸法を決めることになります。

 それはまた次回以降に触れることになると思いますが、その前に丸背についての説明になりそうですね。

shin-1


2010/03/08 (Mon) 23:43


 迷ったあげく・・・
 画像は、映画『コンタクト』のオリジナルサウンドトラックのCDジャケットです。(ちなみに、この映画のメインテーマはすごく良い)
 
 さて、ここで人物の後ろに映っている大きなパラボラアンテナの列は、映画をご覧になった方はわかると思いますが、主人公エリーが宇宙からの怪電波をキャッチすることになる、米ニューメキシコ州に実在する超大型干渉電波望遠鏡群です。(実際にはもうちょっと間隔は空いているのですが…)

 映画『コンタクト』ではここが前半の重要な舞台となったので、今回の本の表紙の図柄はこれをモチーフにしてみようかと漠然と思いながら、このあいだ十年ぶりに原作小説を読んだのですが、なんと原作ではここはまったく出てこなかったのです。
 まったく記憶とは曖昧なものです…。(汗)

 そう、映画はやはり何より“絵になる”ことが大事ですから、砂漠に巨大なパラボラアンテナが林立するこの壮観な景色を撮影の舞台に選んだのでしょうが、考えてみれば小説ではそんな必要は全然ないので、実際にSETI(地球外知的生命探査)にも使われている『アレシボ天文台』が、そのまま電波をキャッチする舞台になったものと思われます。(映画ではこのアレシボ望遠鏡も、序盤に少し登場します)
 
 まぁその他にも、映画の方が事態に対し米政府が積極介入するため、場所はプエルトリコにあるアレシボよりも、米国内のニューメキシコの方が都合がよかったという理由もあるでしょうが…。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B3%A2%E6%9C%9B%E9%81%A0%E9%8F%A1
(リンク先、右上画像の上が巨大望電波望遠鏡群、下がアレシボ電波望遠鏡)

 ところで今回、この文庫本を上製本仕立てするにあたり「小説と映画をきっちり分けて考えるべきか?」ということについて少々悩みました。それは、どちらもとても好きな作品なのだけど、はたして装丁のモチーフに映画独自のものを取り入れるべきかということです。
 実際、文庫本の表紙にはもろジョディ・フォスターが大写しになっているわけだし、他の「原作→映画」といった作品でもこのような事は比較的よく見かけます。

 で、迷ったあげく、今回は一応切り離して考えてみることにしました。ということは、このニューメキシコ州の巨大望遠鏡群は泣く泣く断念せざるを得ないわけで、結果…表紙の図柄をどうしようか、いまだ悩んでいる次第です。(汗)

 ちなみに、もうひとつ記憶違いしていたものに「オッカムの剃刀」という定義があって、これはいわゆる「科学的思考」のなんたるかを端的に顕す古典的な思弁術…というか思考法のことなのですが、映画では前半からクライマックスにかけて重要なキーワードとしてたびたび登場するのに対し、小説では一度も出てこなかったのです。
 てっきり小説でも出ていたような気がしていたのですが…。

 ということで、現在小説に出てくる幾つかの象徴的な事柄について色々検討中でありまして、つまりその…全然進んでいないということです。(大汗)

shin-1
2010/02/28 (Sun) 20:38


 なかなか・・・
 まだ試し染めに試行錯誤しております。
 画像だと見えないのですが、星くずをイメージした細かい染料の粒々をかなり飛ばしてあるので、なんとなく宇宙っぽくなってきたとは思います。でも、もう少し詰めていきたいですね。

 ところで次の段階としては、こんな感じの小口に対してやはり特製の表紙を合わせたいのですが、これがまだ漠然としたイメージしか浮かんでいないのが困ったところです。
 イメージの候補としては『コンタクト』という作品において重要かつ象徴的なものにしようと思っていて、それは例えば、こと座のα星『ヴェガ』だったり、あるいは主人公エリー・アロウェイが怪電波を捉えることになる、実在する天文台『アレシボ電波望遠鏡』だったり…。

 『ヴェガ』は、ちょっと検索すると実際の美しい拡大画像(といっても、青白い光だけなのですが…)を見ることができるので、それをイメージした模様をマーブル染めで表現してみるのもおもしろそうです。
 あるいは、マーブル染めだけでは芸がないので、表紙に使う紙または布の図柄は、絵として自分で何か描いてみようかな、などという考えも一方ではしてきたところです。(でも、ちゃんとした絵なんて、ここ十何年も描いてないなぁ…)

 さて、どうなることやら…。(汗)

shin-1
2010/02/24 (Wed) 23:03


 振り返ると…
 以前にも一度、このダイアリーでご紹介したことのあるマーブリング液を作っている様子です。(画像は本日のものです、念のため…)

 ちょっと遡って調べてみたところ2008年の2月中頃、つまりちょうど丸2年前のことで、自分がこのダイアリーを書き始めてまだ間もない頃のことでした。(久しぶりにずぅ〜と遡ってみたら、途中更新が滞りつつも、それでもけっこう色々書いていたんだなぁと、ちょっと感心してしまいました…)
 ちなみに、それまでは東京ショップの店長用とスタッフ用の2種類の日記があって、店長用の日記はそのままにして、スタッフ用の日記を長野用に変更して引き継いだのでした。

 さて、当時の記述を見てみると、使っている寸胴鍋は現在と同じもの、やっている作業も全く同じで(ま、そりゃそうだよな…)こんにゃく粉をグツグツと煮込んでいます。
 ただし、当時はまだ画材として『マーブリング液用粉末パック』が銀座の伊東屋などで市販されており、その方が作り易くて確実だったので普段はそれを使いつつ、こんにゃく粉を煮込んだ液は、上手く色が乗らないときだけに限定して使っていました。

 しかし、それから間もなくその市販の粉末パックが生産中止になってしまい、全てのマーブル染めをこんにゃく粉を煮込んだ液でやるようになった(2008年3月26日記述)のですが、あれからずっとそうすることが普通になっていたので、すっかり『マーブリング用粉末パック』があったことを忘れておりました。
 
 まだ2年前のことですが「そういえば、粉末パックあったよなぁ…」と、随分遠い昔のような気がしてしまいました。

shin-1
2010/02/21 (Sun) 21:12


 にぎやかし
 文庫本の小口に、マーブルの試し染めをしてみました。

 前回挙げたことのうち、マーブル液の糊分で小口が必要以上に固まってしまうのではないか、という懸念はどうやら杞憂だったようで、染めた後しっかり乾かしてからパラすれば、全く問題無く開きます。…いや、むしろ気持ちが良いくらいに。

 ただし、絵の具の乗り具合が材質的にどうだろうかという懸念は、少し当たっていたみたいです。
 
 ちょうど今日は、在庫が少なめになっていたみすずノート用のマーブル染めを昼間にしたばかりだったので、先ほどそのまま同じように文庫本も染めてみたところ、やはりみすずノートの小口に比べると、若干鮮やかさに欠けるように感じました。といっても画像の通り、まぁ十分にきれいに染め上がったとは思いますが…。

 ところで、今回はあくまで試し染めで、サイアク染め具合が見られさえすれば良かったので、染めが終わればそのまま廃棄するつもりでいました。
 だから本番でやっているように、小口以外の部分を汚さないように保護してから染める必要は無かったのですが、なんとなくもったいなかったので、いつも通りひと手間掛けて(まわりを保護しながら)染めてみたところ、これはこれでもうすでにひとつの『作品』なのではないか、などと思えてきました。
 
 つまり、これに元からのカバーを(化粧断ちした分の寸法を詰めて)掛け直せば、立派に展示品になるかもしれないということで、少なくとも高遠ブックフェスティバルに展示するときの“にぎやかし”くらいにはなりそうです。

 主役はもちろん、現在鋭意進行中でこれから何種類か作る予定の『特製丸背上製本』なのですが、どのみちモノ自体は小さいですし…。

shin-1
2010/02/18 (Thu) 22:21


 試し染め
 さて、いよいよマーブル染めに掛かろうと思い、断裁機で本の三方を“化粧裁ち”したのですが、今までたくさんマーブル染めをしてきた中、そういえば文庫本には一度もやっていなかったことに、つい最近気が付きました。(おいおい…)

 通常、文庫本に使われている本文紙は、新刊本などの書籍用紙やウチのみすずノートの帳簿用紙よりも、かなり薄くて柔らかめの印刷用紙が使われています。ということは、自分の経験からくる勘では、マーブリング液が通常の濃度(みすずノートなどを染めてるとき)だと、小口が液の糊分でいつもより固まりが強くなってしまいそうな気がします。
 
 もちろん、たとえそうなったとしても、最悪パラしながら(パラパラしながら)くっついているところを一枚一枚丁寧に剥がせば良いのですが、それが他にどんな影響を及ぼすかは、やってみないとわからないところです。また、文庫本は通常かなり安価な紙を使っているので、ちゃんとイメージしたように絵の具が乗るか、思った通りのマーブル模様が付くか、材質的にもちょっとばかり心配になってきました。

 なので、まずは本番の前に、読まないというか…まぁぶっちゃけいらない文庫本を使って、入念に試し染めをやってみる必要があるだろうという思いに至り、そのための準備をすることにしました。(ま、今回初めて“宇宙”をイメージした模様にチャレンジするのだから、どのみち試し染め自体は必要でしたが…)

 ということで、けっこう大量の文庫本を入手する必要があるなと考えていたところ、ふと、高遠・本の家さんの店先の本棚に百円の文庫本がたくさん置いてあったことを思い出し、今日の昼休みにちょっとひとっ走り行ってきました。
 で、もちろん買うつもりだったのですが事情を話したところ、今年の高遠ブックフェスティバルに出展するための一環としてお譲りいただけるということで、図々しくも頂いてきてしまいました。(汗)
 本の家さん、どうもありがとうございました。

 
shin-1

2010/02/16 (Tue) 23:24


 あやしい・・
 この前、高遠・本の家に行ったときに買ってきた『怪しいお仕事!』(北尾トロ著)を読み始めましたが…。

 トロさん!!裏稼業の方々、怖すぎッス…。(笑)

 まぁでも、彼らのやっているアコギな商売自体は決して見習ってはいけないのだけれど、反面その「なにがなんでも金に変えてやる!」という執念というか、意気込みというか、なりふり構わなさは、自分には一番欠けているところなので、美篶堂の財政を考えると、ちょっと複雑な気分になってしまいます…うぅ。orz


shin-1
2010/02/14 (Sun) 22:17


 線固め
 前回『合本』のところで繋ぎの部分をどうするべきか決めましたが、線固めをする前にもう一度あらためてパラしてみた(パラパラとめくってみた)ところ、やっぱCの扉ページは繋ぐ部分には無い方がスッキリするよなぁ…と感じてしまい、結局Bと同じように冒頭部に持って行くことにしました。(う〜む、優柔不断…汗)

 さてと、線固めです。

 線固めとは、文字通り本の背を線状に接着剤で固める作業です。これは、本の背を部分的に糊止めすることで柔らかさを保ち、あとから丸みが出しやすいようにするための、丸背本には必須な作業です。要は、角背のようにはじめから全面塗って固めてしまうと、もうそれで丸みが出せなくなってしまうからなのですが、その他にも、このあと本の“耳”を出す『バッキング(バッケ)』という作業にも影響してきます。

 バッキングとは、丸みを出した本の背をキッチリ締めてから、手道具または専用の機械で叩くように押し拡げることをいうのですが、なかなか言葉だけでは説明が難しいので、またその作業に取り掛かったときに画像でお見せすることにします。とにかく『バッキング』のためにも、背が“ごく部分的に”固まった状態でなければならないわけです。
 またそうして固めていない部分が押し拡げられて、そこに本固めのときに接着剤がしっかり塗り込り込まれることにより、更に強固で壊れにくい本になるという効果も期待できます。

 ウチでは通常、A5サイズ(天地210_)の場合、10_くらいの幅の線を4本等間隔につけます。ただし本文紙が滑り易い性質だったり、あるいはかなりの厚みがあったりすると、もう少し線を太くするとか、あるいは線の幅はそのままで5本線にしてみるとか、臨機応変に対応する必要もあるわけですが…。

 今回は文庫本サイズ(天地は約150_)で厚さも25_程度なので、線は3本で大丈夫でしょう。

 見返しは数冊程度ならば、本文紙だけを線固めしたあと一枚ずつ付けて行っても良いのですが、ある程度量産するときは画像のように一緒にしてから固めます。
 今回、見返しの色は「NTラシャ(四六Y目)100s『濃いあい』」にしてみました。これは、表紙の色や小口のマーブル染めを「宇宙」をイメージしたものにする予定なので、それに合わせてみたつもりです。(画像だと、黒に見えるなぁ)

 といっても、その表紙もマーブル染めも、これから色々試行錯誤することになるわけで、どうなることやらわかりませんが…。(汗)
 とにかく濃い藍色ならば、そうそうおかしなことにはならないと思われます…よね?

shin-1
2010/02/12 (Fri) 22:28