ポンコツコンポ(ローカル)


 よくある長月のうた






デリカシーはない。だけど優しさはある。
私を傷つける。だけど私を救ってくれる。
一緒にいてくれない。だけどひとつになってくれる。
連れて帰ってくれない。だけど抱きしめてくれる。
私をひとりじめする。だけど私だけのものになってくれない。



そばにいてくれない。だけどひとつになってくれる。
そばにいられないくせに、ひとつになりたがる。




欲しがっているのは、どっちなんだろう。
答えのでない問題に、ひとり考えつかれて、眠った。





とても大事なものを手の届かないところへ取りあげられて、目の前が真っ暗になった。
光はあなた。だからおとずれる暗闇はあなたのせい。
あなたのために私は世界と自分を切り離したのに、あなたがくれたのは暗闇だけ。
あなたが奪ったのは私のすべて。だけど私はあなたの何をもらえただろう。
吹けば飛ぶような愛の言葉と、すり切れた布一枚だけ。
こんなのもらえたうちに入らないわ。いつからそんな風に思うようになったのだろう。

いつから欲しいものはたったひとつだけになってしまったのだろう。
いつから絶対に手に入ることのないものを欲しがるようになってしまったのだろう。


明るい日差しのもと、幸せそうに笑うあなたを、殺してしまいたいとは思わない。
ただただ自分のことだけ。惨めでかわいそうな自分のことだけ考えていた。
なんてかわいそうな、私。愛されようと必死に微笑んで、可愛い仕草も覚えたのに。
もうぜんぶ手遅れだなんて。もう、もう、失ったものは戻らないなんて。
手の届かないところなんて、嘘!私がそこまで行くわ。すぐにでも行けるんだから。
引き止めるのはだあれ?誰も私の行く手をさえぎらないで!邪魔をしないで!
つかまれた腕をふりほどこうともがくと、優しい二本の腕が伸ばされて、私をつよく包んだ。
私、どうして泣いているの?
かなしいから?
くやしいから?
こわいから?
みじめだから?
かわいそうだから?
つらいから?
うれしいから?
いとおしいから?
にくらしいから?


ねえ、どうして?













あなたが好き。あなたが幸せだったら、それでいいの。他には何にもいらない。
一本ずつ手足を失って、もう寝返りさえ打てない私には、選択肢なんてもうないの。
あなたを愛する以外、もう方法が見つからないの。
手の届かないところ、いつだって行けるわ。こんどは腕を振り払ってみせる。きっと大丈夫。
それまでは押し手のいない車椅子に乗って、あなたに目一杯、愛情を注ぐから。
愛してるなんて言わない。愚かな感情なの。好き、大好き、誰よりも。
手足を失った身体、まだ少しずつ壊れていく。その余地がある。
まだまだあなたから離れられそうにはないということ。
ぜんぶ壊れて、腐って、使い道がなくなっても、あなたは私を迎えには来てくれないでしょう。
そんなあなたでも、とても、とても、とても好きよ。
世界中の、誰より、好きよ。











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11/12/21 (Wed) 0:49



あかるい神無月のうた






遠くからきこえるうたに
耳を寄せていると
いつしかそれが
あなたの声になっていた




夢まぼろしなら
さめることはあっても
にがくはないし
いたくもないし
なにより
とてもしあわせ




細めた目は
たぶん、まぼろし
心臓をつかまれる
いたさだって
きっと、まぼろし




だからなんにもこわくなんてないの




仄かにかおる
清潔で甘いにおいを
夢の中で追いかけているうちに
ひどくにがいいたみが
心臓を突きさして
そうして
わたしは死んだ





(もう一度だけ笑って、もう一度だけ、おねがい、もう一度だけ…)










わたしは死んで
わたしのいない
しあわせで
あまい世界が
あのひとをつつんだ





わたしは
ずっと
甘い夢にもたれかかって
ひとりで泣いて
死んでいる





































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11/10/26 (Wed) 11:41


泣くな、明日までは






毒気を抜かれたような顔の次は、お気に入りの玩具を取られた子どもの顔。
人に傷付けられることに慣れていないきみは、頬を赤く火照らせて震えている。
僕だって泣きたいさ。そして誰かの腕の中で慰められて朝を迎えたい。
だけどそれが許されない。いまはきみを傷付けることしか許されていないんだ。
柔らかな肌、握りしめた白い拳。手入れの行き届いた長い髪。細くて頼りない身体。
僕だって欲しいさ。きみの容姿、魂さえも。それさえあれば愛されたんだ。
だからいまは傷付けさせて。きっともう二度と会わない。こんなことしない。
てのひらに食い込んだ爪だって柔らかいんだろう?それなら跡なんて一瞬だ。
僕の爪は水分が足りなくて硬いんだ。そして跡も一生残るほど。
きみでさえあれば愛されるんだ。こんなこと、何でもないだろう?
丸っこい、宝石みたいな瞳がこちらを捉えるのに虫唾が走って、それからほんの少し、恋をしそうになって、軽く歯噛みした。



きみなんか大嫌いだ。
だけど、どうか泣くな、明日までは。















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11/07/13 (Wed) 1:31


他人の幸福






「疲れてない?大丈夫?」
「全然平気。ありがとう」
「もう他の店見なくていいの?」
「もう遅いし。大丈夫だよ」
「でも買えてないじゃん」
「ああ、さっきので間に合わせるよ。ありがとう」
「だめだよ、妥協しちゃ。ちゃんと納得いくまで選ぼう」
「悪いよ、もう帰ろう」
「大丈夫。あ、あそこ行ってみよう」
「でも」
「はやく」
「ごめんね」
「ううん」
「ありがとう」
「うん」
「あ、あれ、可愛い」
「どれ?端っこの?」
「そう、緑の」
「かわいいね、似合うと思うよ」
「やっぱり?似合うと思う?」
「うん。絶対喜ぶよ」
「そうかなあ」
「そうだよ」
「よーし」
「決めた?」
「うん、あ、いや、向こうのも見る」
「納得しないとね」
「ここまで来たらね」


「うーん、やっぱりさっきのかなあ」
「うん、さっきのがいいね」
「やっぱり?」
「うん」
「じゃあこっちにする」
「決定?」
「決定」
「後悔しない?」
「うん。決定!」
「よかったあ」
「よかった。ほんとありがと」
「うん」
「ごめんね、付き合わせて」
「ううん、全然」
「よし、今度こそ準備万端だ」
「よかったね」
「うん。ほんとありがとう!」
「うん」
「じゃあ、また明日学校で」
「うん。気を付けて」
「そっちもね」
「ばいばい」
「バイバーイ!ほんとにありがとう!」
「うん。ばいばい。また明日」









瞼にまぶしい他人の幸福。
(せめてきみが言葉通り他人だったら)


















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11/06/22 (Wed) 2:23


つめたい水無月のうた









心臓に根付いた花みたい、呼吸をするたび成長する。
ああ、どうか微笑わないで。
どうか、どうか名前を呼ばないで。
確信した目つきで優しく腕を伸ばさないで。絶対!


茎を切ったらきっと痛い。
根っこごと引き抜けばショックで死んでしまう。
だから今日も馬鹿みたいに呆けるか、
小賢しいふりをして ねえねえ と駆け寄るだけ。


肌に触れてもいい?(絶対さわらないから)
名を呼んでもいい?(絶対口にしないから)
鼻を寄せてもいい?(絶対呼吸しないから)
声を聴いてもいい?(絶対記憶しないから)


血なんて枯れてしまえばいいのに。
もう花はこれ以上育たない。場所がないの。破裂しそうなの。
お願い、遠く、連れて逃げて。
自慢の車をここへ呼んで!


死をひとまたぎすれば、花を摘んでプレゼントできる。
だから今は良い子にして黙っておきます。
手にした瓶が温まらないよう、
指先でつまむようにして持っておきます。


どうか聞こえないふりをしていてね。
そのまま聞こえなくなったって構わないから。
お願い、微笑うのをやめて、そんなに大きな声を出さないで、
確信した目つきで優しく腕を伸ばさないで。絶対!












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11/06/16 (Thu) 3:09


 






少年よ、それで空腹を満たすのだ










野菜など食べなくても君は充分青いじゃないか。
いまは感じるままに炎を燃やせ、今はまだ、な。


知った風に俺に説教したいけ好かないあの男。何を考えているのかさっぱり分からない。
俺のこのやるせなさ、お前なんかに分かるものか。
俺には金がない。上等な家もない。常識と愛情を持った親もいない。
アブラを含んだ肉もない。
だからいつも安い葉っぱで飢えを凌ぐほかない。
炎とやらを燃やそうにも、一滴もガソリンがない。
ないないづくしの毎日で、希望なんて見えるはずもない。
恵まれた人生を我が物顔で歩くあいつに、何が分かるっていうんだ。何も分かるはずがない、そうだろう?
くそっ、面白くない。つまらない。あいつの知った風な物言い。目的も何も分からない。
ないないづくしの俺から生まれるものは、やっぱり「ない」で終わることばっかりだ。
くそっ、くそっ、ちくしょう。悔しい。見返してやる。あいつの顔が悔しさに歪んで、俺が正しかったのだと絶望と共に悟る様子を見てやる。やり方はまだ分からないが、俺は若い。時間はある。これからじっくり考えられる。
自信に満ちた去っていく後ろ姿を、必ずしょぼくれさせてやる。
俺はそう決意して、復習の炎を囂々と燃やした。燃やし続けた。




(――――そのガソリンは、どこから湧いた?)
(初めは怒りでも構わないさ。
 君の人間としてのエネルギーを生み出すんだ。
 原動力はいつだって、外へ内へと巡らす思い。)




(――――――少年よ、それで空腹を満たすのだ。)
















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11/02/27 (Sun) 1:47


5年前に書いた話を載せるというナルシスト臭い行為




加熱するだけのテレビディナー





もう日も暮れ始めた湿度の高い空気のころ、薄暗い階段を抜けて明るいあかるい台所へ。
夏の夕陽のひかりを今だけ浴びるその空間、冷蔵庫の音だけが響いている。


電話が鳴った。誰からかなんて、考える間でもなく、
「もしもし」


「もしもし…、わたしよ」


「うん」


ひどく冷淡に返事をしてあとは黙っていた。言うべきことはもうないし、生みだそうとも思わないから。
しばらく沈黙、彼女の呼吸をする音が小さなスピーカーから聞こえる。ひゅうひゅう、偽物みたいに。
「…あのね…」
「うん」
三文字呟いて再びの沈黙。ひゅうひゅうを聞きながら夕食のメニューを考える。面倒だな、何にしよう…
「…どうして、何も言ってくれないの」
突然ぽろりと告白してあとは啜り泣く音が。これって本当に泣いているのだろうか、と考えつつも再びうん、と言った。夕食、何にしよう。
「わたしのどこがいけないのか…言ってよ。でないと何も…」
ずっ、ずっ、と鼻水を啜る音。この明るい台所ではないどこかで彼女は泣いている。悲しいからなのか悔しいからなのか、はたまた惰性か、慟哭か…知るのも推測も何もかもが面倒になる。
面倒になることが面倒になる。そんなの言葉遊びだと解っているつもりだけれど。
「ねえ…」
目は食器棚を追いかけながらぼんやり考える、言葉の力は恐ろしい。
だから安易に心を口に出すまいと生きてきたのに、どうやら社会では雄弁が金のようで…沈黙は段ボール、に金の折り紙を貼り付けたもの。
雄弁は純金です。いざというときに何も発言ができない人はいけません。沈黙はさしずめ段ボールといったところでしょうな。
食器棚の中に鎮座する大きなグラタン皿がそう言っているようで苦笑する。
「なにがおかしいの」
彼女が怒りを声に滲ませた。いけない、今は電話中だったのか。
「いや…」
言い訳も勿論面倒で、再び沈黙。たとえ段ボールでも、今の自分には沈黙しかなくて、だから。
「どうしてなの…どうして、何も、いっ…」
ふうう、大きく息を吐く、それに怯えたように言葉を止める彼女。しかし後に続く言葉などなく。


どうしてこうなってしまったのだろう、ただ、自由に誠実に生きていたかっただけなのに。
何もない平穏が愛しくて鮮やかで、縋らずにはいられない。皆はそうじゃなかったのか?


自分ひとりがまるで切り離されたかのように夕陽の台所の中佇む、遠く冷蔵庫の音…
並んだ小さなグラスは「そうしていればいい」「いや抜け出せばいい」などと口々に。
重ねられた白い皿は皆口を揃えて「嘘を吐け」。
立てられた箸は「もう戻れない」銀のスプーン「刺してしまえ」ペアのフォークは「掬ってあげな」。
おそらく引き出しの中整列しているであろうストロー達細々と「ここは紳士的対応を」。
たった一つのラーメン鉢は「そのままずっと押し黙れ!」。
グラスの隣鎮座する湯飲み、「諦めてくれと一言なぜ言わない」。


皆の意見は寂しい夕陽に絡め取られて消えていく、あ、驚く間に背後の電子レンジ、ぽつり漏らした。


「加熱するだけのテレビディナーのように便利で幸せであればいい、それがあなたの願いのすべて」



なるほど解決策より現状理解と自己完結、全く現代人らしい考え方で清々しい。
その一言で何かが開かれたような気がして、思わず受話器に吹き込んだ。



「加熱するだけのテレビディナーのように便利で幸せでありたかった、それがぼくの願いのすべて」



彼女は暫く黙っていたがやがて通話を諦めてくれた。伝わったのか通じたのか、そうでなくても構わない、このひどく面倒な世の中に見つけた一つの指標を再び夕陽沈み行く台所で緩く握りしめる。









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11/02/17 (Thu) 16:30


ナチュラルうんこ製造機
2月にあけおめと言う暴挙!吉岡です。
pixivもサイトも放置して幾星霜…落書きは結構溜まってるので何とかしたいです。
今日のような感じで小話も隙を見て書けたらいいな。
と、これだけだといつもの感じでアレなのでたまには何か書こう。



自分の周囲の人たちを見てたら自分の無知さとか何もなさに恥ずかしくなってついでに惨めにもなります。
趣味とか、夢とか、そういったものに対して真剣に向き合ってるんですよ。
しかも突き詰めてる。知識も深い。姿勢も正しい。
それに比べて自分はどうだ。何に対しても中途半端、やる気はあるけど突き詰めはしない。知識は浅いか皆無。姿勢は猫背。
なんか、こういう自分への評価って自分の物差しでやるから周りの「そんなことないよ」って一時的な痛み止めにしかならないのも辛いとこですね。自分の中の物差しって変わらないから、自分が成長しない限り低い評価は低いままなんですよ。ああ自分ダメ人間だなあ、中途半端野郎だなあってウジ虫モードでウジ虫ライフを満喫するにとどまってしまうんです。
飽き性と言ってしまえばそれまでですが、何に対しても時間をかけることができないし、没頭し続けることもできない。かといってあれこれ手を出すこともしたくないので引き出しも増えない。気に入ったものをずーっと中途半端にこねくり回すだけなんです。なんなんでしょうね、向上心とか探求心とかが無い人間なんですかね。たぶんそうなんだと思います。
物差しの規格も、自分を成長させるための原動力も一定して変わらないから趣味も夢も中途半端で味気ないんでしょうね。保守的というよりもただの怠惰な人間ですね。自分、なんなんだろう。他人に迷惑かけてるとは思わないけど、かといって誰かに良い影響を及ぼすほどのことは何もしてないナチュラルなうんこ製造機ですかね。ナチュラルうんこ製造機。そう、私はナチュラルうんこ製造機です。
この「自分がどうしようもなく中途半端な人間」だという現状を何とか前向きに捉えられかつ社会に貢献できるような契機はないものかと考えています。結局人任せかよ。大抵のことを「まあ、イーノック」で片づけられる大らかさは唯一の長所だと自負していますが、こんな私でも社会に役立つ人間になる可能性はあるのでしょうか。お願いだから殺さんといて。


とまあ普段は基本的に上のようなことを考えて生きているわけですが、それでも好きな人と関わったり絵を描いたりしてると気持ちが晴れます。現実も二次元もいいものです。これからもネットと現実の両方に生きていきたいなあ。百合漫画描きたいなあ。まとまりなくてすみません。また時間があったら長文垂れ流しますね。twitterは便利だし楽しいけどこういうこと書けないからね。
それではまたお会いしましょう。
11/02/04 (Fri) 0:20


ひとりっ子



伸びた爪で
薄い皮膚をこそげ落とすような
毎日を
僕は
過ごしている


薄暗い部屋は
寒くて
狭くて
幸せになれる要素など
一つもない


無知なぼくは
あの子を笑わせるだけの
知識も
手段も
持てずに


無知なぼくは
あの子がどこで
どんな風に
笑うのかも
知らずに


無知なぼくは
ぼくを幸せにできるであろう要素を
探すことも
得ることも
できずに


無知なぼくは
無知であることも
分からずに


狭く薄暗い部屋の
冷たい床の上で
伸びた爪で
薄い皮膚をこそげ落とすような
毎日を
過ごしている












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11/02/03 (Thu) 23:48


お久しぶりです
ついったばかりしててすみません生きてます吉岡です。
今年はきもち穏やかな大晦日と元日が過ごせそうでちょっとしあわせ
皆様もよいお年を…気が早いか…
とりあえず12月中旬まで死なずに生きることが目標です
ではでは!
10/11/25 (Thu) 17:20





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