ロマーノは性格もロヴィーノによく似ていた。
フランシスはロマーノを溺愛するアントーニョを見てくらくらするものを感じた。
彼にとっては悉皆が責め苦であった。
そしてアントーニョが狂っているようにしか見えなかった。
ロマーノは人間の子供ゆえに日々成長してゆく。
アントーニョはそれを目を細めて見る。
「アントーニョ、お前、だいぶ立ち直ったみたいだからさ、俺帰るよ」
耐えかねてフランシスは言った。
幾ら大切な友だからとて、笑って見ている事の出来る事と出来ない事とがある。
アントーニョは笑って言う。
「そーなん?」
「ああ、俺も長く家を空けすぎたしさ」
「ふぅん、寂しゅうなるな」
彼は訝る事を知らない。
純真な子供のような男だ。
「いつでも遊びに来てや」
アントーニョの言葉に手を振って応えた。
フランシスは自宅に戻ると深い息をついた。
―――解放された。
幾らふたりが酷似しているからと言って、フランシスはロマーノとロヴィーノを同じに見る事は出来なかった。
しかし不器用で意地張りなロマーノは何をしてもロヴィーノに似ていた。
アントーニョは錯乱しているのかいないのか、同じような態度でロマーノに接した。
彼の口ぶりだけを聞いている間は、フランシスはロヴィーノが生き返ったのかと錯覚したほどである。
時々の錯覚が何よりつらかった。
ロヴィーノがまだ生きている、そう思う事はフランシスの心に一条の光と希望を与えた。
そして、そうではない事を知った後の失望は大きかった。
それはロマーノの否定では決してない。
かつてロヴィーノを守れなかった事とそのせいでアントーニョが多少おかしくなってしまった事が彼の中でやはり根深く傷となっていたのだ。
フランシスは怪しいと思われぬようにたびたびカリエドに遊びに行った。
初めはロヴィーノが動いていた頃と同程度の頻度で通った。
しかしロマーノの存在はフランシスに苦い感情を思い起こさせるだけであった。
次第に足は遠のいていった。
誰もそれを責めはしない。
「フランシス、忙しいん?」
責めはしなかったがアントーニョは心配した。
「まぁな」
フランシスは言葉を濁し、紅茶を啜った。
今日の茶菓子のクッキーをつまむ。
「無理せんとってな。あんま無理すると…」
アントーニョは遠くを見つめた。
何かを思い出しているらしかった。
「疲れてしまうで」
へら、とアントーニョは笑った。
力のない笑みであった。
「少しくらい疲れたって、お兄さんは構わないさ」
「あんまストレスためるとおかしゅうなってしまう」
「まさか、ロ―――」
フランシスは言葉に詰まった。
アントーニョの傷は根深い。
そんな事知っていたはずだ。
今更突きつけられた気分であった。
ロヴィーノは周囲の殺伐とした雰囲気にストレスを感じていた。
それは無意識裡の自傷行為にも表れていた。
多大なストレスだったのだろう。
感情を持つと言う事はつらい。
「俺は大丈夫」
フランシスは溜め息混じりに言った。
「ただそんなに繁くは通えないかもしれない、ごめん」
「平気やって。それよか、無理せんといてね」
ああ、とフランシスは頷いた。
アントーニョはクッキーもうないわ、と悲しげに言う。
そろそろロマーノが昼寝から起きるだろう。
そうすると少し騒がしくなる。
いつかの日のようになる。
「ロマにもおやつ、用意してやらんとなぁ」
アントーニョが席を立った。
フランシスは一人でその場に残る。
少しあってロマーノが起きてきた。
「おやつ出せこのやろー…って、お前ひとりか?」
「アントーニョはおやつ作りに台所」
ロマーノは少しきょろきょろと周りを見た。
一体何の動きだろう。
彼は少し声をひそめてフランシスに訊いた。
「暫くあいつ戻らねえのか?」
暫くとはどのくらいだろう。
しかし何を作るにしろすぐには戻って来ないだろう。
フランシスがそう答えるとロマーノはフランシスをじっと見つめた。
意味ありげな目つきである。
サイト更新なかなか出来ないや。
はー。
今日うち帰ったら出来るかしら。
これをある程度まで進めてからリクエスト取りかかりたいなー、なんて。