ゆめきんはらごしらえ


酷似12
ロマーノは性格もロヴィーノによく似ていた。
フランシスはロマーノを溺愛するアントーニョを見てくらくらするものを感じた。
彼にとっては悉皆が責め苦であった。
そしてアントーニョが狂っているようにしか見えなかった。
ロマーノは人間の子供ゆえに日々成長してゆく。
アントーニョはそれを目を細めて見る。

「アントーニョ、お前、だいぶ立ち直ったみたいだからさ、俺帰るよ」

耐えかねてフランシスは言った。
幾ら大切な友だからとて、笑って見ている事の出来る事と出来ない事とがある。
アントーニョは笑って言う。

「そーなん?」

「ああ、俺も長く家を空けすぎたしさ」

「ふぅん、寂しゅうなるな」

彼は訝る事を知らない。
純真な子供のような男だ。

「いつでも遊びに来てや」

アントーニョの言葉に手を振って応えた。
フランシスは自宅に戻ると深い息をついた。
―――解放された。

幾らふたりが酷似しているからと言って、フランシスはロマーノとロヴィーノを同じに見る事は出来なかった。
しかし不器用で意地張りなロマーノは何をしてもロヴィーノに似ていた。
アントーニョは錯乱しているのかいないのか、同じような態度でロマーノに接した。
彼の口ぶりだけを聞いている間は、フランシスはロヴィーノが生き返ったのかと錯覚したほどである。
時々の錯覚が何よりつらかった。
ロヴィーノがまだ生きている、そう思う事はフランシスの心に一条の光と希望を与えた。
そして、そうではない事を知った後の失望は大きかった。
それはロマーノの否定では決してない。
かつてロヴィーノを守れなかった事とそのせいでアントーニョが多少おかしくなってしまった事が彼の中でやはり根深く傷となっていたのだ。

フランシスは怪しいと思われぬようにたびたびカリエドに遊びに行った。
初めはロヴィーノが動いていた頃と同程度の頻度で通った。
しかしロマーノの存在はフランシスに苦い感情を思い起こさせるだけであった。
次第に足は遠のいていった。
誰もそれを責めはしない。

「フランシス、忙しいん?」

責めはしなかったがアントーニョは心配した。

「まぁな」

フランシスは言葉を濁し、紅茶を啜った。
今日の茶菓子のクッキーをつまむ。

「無理せんとってな。あんま無理すると…」

アントーニョは遠くを見つめた。
何かを思い出しているらしかった。

「疲れてしまうで」

へら、とアントーニョは笑った。
力のない笑みであった。

「少しくらい疲れたって、お兄さんは構わないさ」

「あんまストレスためるとおかしゅうなってしまう」

「まさか、ロ―――」

フランシスは言葉に詰まった。
アントーニョの傷は根深い。
そんな事知っていたはずだ。
今更突きつけられた気分であった。
ロヴィーノは周囲の殺伐とした雰囲気にストレスを感じていた。
それは無意識裡の自傷行為にも表れていた。
多大なストレスだったのだろう。
感情を持つと言う事はつらい。

「俺は大丈夫」

フランシスは溜め息混じりに言った。

「ただそんなに繁くは通えないかもしれない、ごめん」

「平気やって。それよか、無理せんといてね」

ああ、とフランシスは頷いた。
アントーニョはクッキーもうないわ、と悲しげに言う。
そろそろロマーノが昼寝から起きるだろう。
そうすると少し騒がしくなる。
いつかの日のようになる。

「ロマにもおやつ、用意してやらんとなぁ」

アントーニョが席を立った。
フランシスは一人でその場に残る。
少しあってロマーノが起きてきた。

「おやつ出せこのやろー…って、お前ひとりか?」

「アントーニョはおやつ作りに台所」

ロマーノは少しきょろきょろと周りを見た。
一体何の動きだろう。
彼は少し声をひそめてフランシスに訊いた。

「暫くあいつ戻らねえのか?」

暫くとはどのくらいだろう。
しかし何を作るにしろすぐには戻って来ないだろう。
フランシスがそう答えるとロマーノはフランシスをじっと見つめた。
意味ありげな目つきである。


サイト更新なかなか出来ないや。
はー。
今日うち帰ったら出来るかしら。
これをある程度まで進めてからリクエスト取りかかりたいなー、なんて。
2009/07/04 (Sat) 19:05



酷似11
アントーニョは暫く泣いていた。
声を殺して泣くので余計に聞く者の胸を締め付ける泣き方である。
フランシスは辛抱強くそれに付き合った。
泣き終わったアントーニョの顔はどこかすっきりとしていた。

「我慢ばっかりは体に良くないよ」

フランシスが宥めるような口調で言う。
アントーニョはそうやなぁ、と呟いて涙を拭った。

それから先、アントーニョは少し吹っ切れたようだ。
動作が自然でのびのびとするようになった。
相不変笑顔はぎこちなかったが、それでも大した回復だろうとフランシスは思った。
そんな中アントーニョはフランシスに次のように言った。

「な、フランシス。今日から俺に子分が出来んのや」

そう言ってアントーニョは笑った。
久方ぶりの笑顔であった。
しかしフランシスは言葉を失ってアントーニョを見るしか出来ない。
ロヴィーノの喪失によって得た傷はまだ完全には癒えていないようにフランシスには見えた。
それなのに新たに子分が来るなど、早計にすぎる気もした。

「へ、へぇ…」

にこにこと笑うアントーニョはまるで以前のようであった。
そうだ、こいつはこんな顔で笑うんだ、と思い出すようにフランシスは思った。

「今度は殺さへんようにしないとなぁ」

からっと笑ったままアントーニョは言うのだ。
フランシスの胸はずきずきと痛んだ。
別にロヴィーノはアントーニョが殺した訳ではない。
たったそれだけのフォローもアントーニョは受け付けそうにもない。

「アントー…」

フランシスが言いかけた時である。
カリエド家の門からローデリヒの声が聞こえた。
そう言う躾がなされたのか、ローデリヒは招かれるまでは他人の家の中、敷地の中には入らない。
フランシスは既にアントーニョの性格を了解しているためずかずかと入る。
アントーニョは滅多に門まで迎えには来ないし、勝手に敷地内に入られても一向気にしないのだ。
しかしローデリヒは融通がきかず、毎回門で怒鳴ってアントーニョを呼ぶ。

「お、来たみたいや。ちょお待っとって」

へら、とアントーニョは笑って言った。
もっと前にわかってたら、とフランシスは思った。
事前に子分の話を聞いていたら全力で止めただろう。
昔はどんな些細で下らない事もいちいち報告してきたアントーニョらしくない。
何か秘密裏に話を進めたい理由でもあったのだろうか。
水臭い、いやな奴、とフランシスは心中で毒づいた。

「フランシース?」

随分と深く考え込んでいたようだ。
アントーニョに幾度も幾度も名前を呼ばれやっと気付いた。
しかし目の前にいる子供を見て、まだ夢を見ているのかと錯覚した。
夢をそんなにも見たいのか。

「ろ、ロヴィ……」

子供はロヴィーノにそっくりであった。
生き写しですらある。
ただ瞳の色が違うくらいである。
ロヴィーノの瞳は緑だったが、子供のそれは茶色だ。
アントーニョは子供の手を引いてにこにこしている。
反対に子供は無愛想にフランシスを睨んでいた。

「ロマーノや」

言ってアントーニョはまたにこりと笑った。
ほら、ロマご挨拶、と促すが子供はむくれたまま口を開きもしない。

「ごめんな、愛想なしで」

「いやそりゃ構わないけど…その子…」

アントーニョはロマーノを抱き上げた。
放せちくしょう、とロマーノが暴れた。
アントーニョは気にせずに平然と子供を抱いている。

「似とるやろ、あの子に」

似てるどころじゃない、とフランシスは思った。
ロマーノを見てアントーニョは目を細めている。
まるで地獄だ、とフランシスは思った。


思うんだけどこの話でいちばん可哀想なのお兄さんだよね。
2009/07/04 (Sat) 13:04


酷似10
ロヴィーノが壊された。
誰にも想像もつかぬほどの高い科学力によって作られた芸術作品のようであったロヴィーノが壊れた。
修復は不可能である。
よしんば可能であっても中の動力源を奪われたために二度と動かす事は叶わない。

アントーニョとロヴィーノが共に暮らした日々は短くあっという間に過ぎ去った。
但し長命種の感覚で、だが。
実際これを生きている人間の時間に換算すると百年をゆうに越す。
幾百年を生きても互いの存在に飽きる事はなかったし喪失はショックであった。
アントーニョは心の安定をすっかり欠いてしまった。
フランシスは古くからの友が以前と比較して暗くなってしまった事を遺憾に思った。
フランシスも、ロヴィーノを守れなかったのだ。
眼前でこの小さな子供の生命は掠め取られてしまった。
彼は彼で自責の念にかられたし、ショックも受けた。
しかし何よりフランシスの心に傷をつけたのはアントーニョの変わりようであった。

既に物となってしまったロヴィーノの汚れを落とし、フランシスは倉庫にしまった。
カリエドの倉庫である。
アントーニョがあまりにも見ていられない状態なのでフランシスはカリエドに寝泊まりするようになっていた。
時折ローデリヒも様子を見にカリエドを訪れた。
周囲の人間の慰めもあってかアントーニョはだんだん立ち直っていった。

ロヴィーノの心臓部を抜いた男は
「関係ない」
と言った。
フランシスとアントーニョが何を言ってもそれ以外の言葉を口にしなかった。
ロヴィーノが幼い男児であろうと関係ない。
生きた人の手足をもぐ事がどんなに非道であろうと男の仕事には関係がない。
終始その調子であった。
そしてこの世にふたつとない財宝ゆえに奪ったのだと高笑いをしていた。

三食とおやつを作る事はフランシスの仕事となっていた。
彼はアントーニョがよく作っていたチュロスを作った。
しかしどうにも記憶の中の味とは違う。

「ごめん、あんまり美味しくないかもだけど」

フランシスはそう前置きをしてからチュロスをアントーニョに渡した。
アントーニョはぎこちなく愛想笑いを作って受け取る。

「えらい謙遜さんやな。フランシスのお菓子がまずかった事ないで」

アントーニョはチュロスをかじる。
そして美味しいと言う。
その動作には精彩が欠けている。
長い年月、心底愛したロヴィーノの喪失はやはり深く深くアントーニョを蝕んでいるのだ。
その愛が家族愛なのかそれとは別のある感情なのだかアントーニョ自身にすらわからなかった。
そして、どちらであろうと大して変わりのない事である。

「なぁフランシス」

「何?」

「俺、お前にもローデリヒにもえらい心配かけてしもうたなぁ」

アントーニョは苦笑した。
一応これも笑いの内に入るだろうか。
フランシスは少しく苦しく感じた。

「お前のせいじゃないだろ」

「んー…でも、たかだか機械の事であんなに凹んでしもて」

フランシスは我と我が耳を疑った。
アントーニョがロヴィーノの事をたかだか機械と表現した事に驚いた。
沈み込んだアントーニョの方が遥かにマシだ。
一体どこでこんなに詰まらない冗談を身につけたのか。
アントーニョはフランシスの記憶が正しければロヴィーノを溺愛していたはずだ。
フランシスは咄嗟に返事をする事が出来なかった。

今はもう決して戻れぬ日々の中、彼の記憶の中のふたりは楽しそうに駆け回っている。
互いが互いを心底から大切にしていた。
到底他者には入り込めない絆のようなものがあった。
アントーニョは誰にでも心を開き笑いかけたがロヴィーノは決してそうではなかった。
アントーニョの発言はその全てを否定する事と同義だ。

「おーい、フランシスぅ?」

あまりに返答がなかったためかアントーニョがフランシスの目の前で手をひらひらと振った。

「お前、今の本心か」

思わず低い声が出た。
アントーニョを睨みさえしていた。

「ローデリヒがな、そう言ったん。ま、他人から見たらロヴィなんて…っ」

アントーニョは言葉に詰まった。
彼は俯いて嗚咽に似た音を出していた。

「お兄さんは他人じゃないだろ?」

言いながら、フランシスはアントーニョの泣き顔を見てはいないと思った。
ロヴィーノが死んだ時だけだ。
その後は心配をかけまいかけまいと彼なりに気丈に振る舞ってきたのか。
フランシスは眉根を寄せた。



お兄さん難しいっす。
私に都合の良いよう動いてもらってるけど、これって……((((゜д゜;))))

本家読み直してくるわ。

でも親分の悩み相談聞いてたり、面倒見は良いんだよねきっと。
2009/07/03 (Fri) 20:13


リク2-4
アントーニョはロヴィーナのキスにその舌で応えた。
ぬるぬるとぬめる赤い舌が彼女の唇を舐め、歯列をなぞった。
こんなキスは彼女にとっては初めてだ。

「ふ…あぅっ」

彼女は逃げ腰になる。
アントーニョの舌は彼女の口内を蹂躙する。
ロヴィーナの下半身に熱がたまる。
静かに陰部が熱くなっていっている。

「アン…トーニョっ」

漸くアントーニョが彼女を解放した。
ふたりとも息が荒くなっている。
ロヴィーナは太股を擦り合わせて己の劣情を隠そうとした。
道のド真ん中で一体何をさかっていると言うのだ。

「あかんなぁ、ロヴィ。キスされたらしたくなるやろ」

へらっと笑ってアントーニョは言った。
ロヴィーナは返す言葉がわからず黙ってアントーニョを見つめていた。
先ほど見えた獣の様な欲はどこへ行ったのか。
アントーニョの目にはぎらぎらと欲望が光ってはいなかったか。
それなのに今はなぜ人畜無害かのような顔でへらへら笑っているのか。
訳がわからなくなりロヴィーナは舌打ちをした。

しかし彼女は今何か満たされた気持ちでもあった。
唇と唇を重ねただけである。
それでも想い人が欲にまみれた表情を自分に向けた。

「別に。やって、いいのに」

「なんか、気付かないよにしてた事に気付いてしもうた」

言って、アントーニョは笑った。
ロヴィーナも気付いてはいた。
何しろ他人が己に向けている感情に聡い子だったのだ。
アントーニョは自分でも気付かない内にロヴィーナの事を好きになっていた。
そしてキスで自覚してしまったのだ。

「良いじゃない、気付けて。幸せにしてやるぜこの野郎」

「おおこわ」

ロヴィーナは歯を見せて笑った。
アントーニョは持ち前の階謔心か彼女を揶揄する事を止めない。
それがロヴィーナには少しく不満であった。
せっかくなのだ、睦つ言のひとつやふたつがあっても良かろう。
別になくとも構わぬものであるが。

「アントーニョ、好き」

焦れてロヴィーナは自分から言った。
しかしアントーニョはおおきに、と笑うのみである。

「馬鹿!」

「あは、嘘やうそ。うそうそや。許したってロヴィーナ」

「言ってよ、馬鹿」

ロヴィーナは口ではそう言った。
だが本心ではなかった。
おまけに期待をしていなかった。
アントーニョはそんな事言ってはくれないのだろう。
しかし体中から溌される雰囲気が何より如実に彼女に伝えている。
アントーニョはロヴィーナに惚れている。
重要なのは事実であって言葉ではない。
ただ、言いたかっただけである。
だだをこねたかった。

「好きや、ロヴィーナ」

急に真剣な口調でアントーニョは言った。
ロヴィーナは驚いて彼の顔を見た。
言ってくれるとは思っていなかったし、よしんば言ったとて茶化すように言うかと思っていた。
意外であった。
そして嬉しくもあった。

「ほんまやで」

「わかってる」

ロヴィーナは少し踵を上げた。
そして軽く目を閉じ、唇を突き出した。
アントーニョの唇がそこに触れる。
ロヴィーナは大きすぎる幸福にくらくらした。
甘い陶酔が頭の先から足までをとろけさせる。
膝からふぅっと力が抜け、アントーニョに抱きつく。

「あ、ああ、あい、してる」

ロヴィーナはぎこちなくそう言った。
好きと愛しているは重みが違う。
唇が緊張に震えた。
アントーニョはにっこりと笑顔で答えた。
この人を好きになって良かったとロヴィーナは心底から思った。


西ロマと言い張るのだ。
悶々要素がない気がしないでもないがこれでリクって事で。
他のリクは手の空き次第やります、多分。
2009/07/02 (Thu) 23:43


リク2-3
ロヴィーナとアントーニョは長い時間を一緒に過ごした。
だが依然としてアントーニョの心はロヴィーナには傾かない。
彼女は開き直る事にした。
別に好かれる必要などどこにもない。
相思相愛などと言う幻影に夢を見ていたって誰の損得にも関わりがない。
つまり惚れた腫れたは総じてくだらない話なのかもしれぬ。

「アントーニョ」

ふたりきりの帰り道である。
アントーニョは中身のないすかすかのバッグをふたつ持っている。
片方は合成皮の紺のスクールバッグでもう一方は白のエナメルのスポーツバッグである。
ロヴィーナは手ぶらだ。
荷物は隣の男に持たせている。
ロヴィーナは右隣を歩くアントーニョに甘い声で話しかける。

「私、あんたとこうしてるの好き」

「うん」

「でも、別に恋仲じゃなくてもいい」

「どした?」

ロヴィーナは肩をすくめた。
義理で笑ってみる。

「あ、可愛え」

アントーニョの呟きを彼女は無視した。
余程、知ってるわよ馬鹿、と言ってやろうかと思った。
だが無駄な言葉だ。

「別にあんたは私の事好きでも好きじゃなくてもそうなんだと思う。ならわざわざ両思いになりたいなんて思わなくたって良いんじゃない」

「好きやで、ロヴィ。俺、お前の事」

わかってるわよ。
ロヴィーナは溜め息をついた。
どうにもこの男には話が通じているのやら、わからぬ。

「寧ろ私はこの関係が好き」

にっこりとロヴィーナは笑った。
アントーニョが少し顔を赤らめたのがわかった。
そんなに上手く笑えていたのだろうか。
皮肉な事だ、とロヴィーナは思った。
諦めたつもりだと言うのに、アントーニョが期待させるような反応をするから期待してしまう。
別にアントーニョが女として彼女を好かなくても良いと言うのは完全に本心であった訳ではない。
確かに今の関係は好きだ。

「ロヴィ、めっちゃ可愛え」

「知ってる」

ロヴィーナは自分が一般的に見て相当恵まれた容姿をしている事を知っている。
そしてそれゆえに男子学生の間で人気である事も知っている。
しかし社交的ではないためさほどモテる訳でもない。
お高い美人さまより気安いブスが良いのだ。
それも全てロヴィーナはわかっていた。

「あんた別にかっこよくなんかないけどね」

気さくな人柄がアントーニョの人気の理由だ。
ロヴィーナは別に格好良くないと言ったが、彼は十人並み、或いはそれ以上であろう。
格好良いの部類に充分入る。

「すき、好き、本当に、すき…」

ロヴィーナはまた逃げてしまいたい衝動に駆られた。
彼女の告白を困ったように笑って流すアントーニョを見たくはない。
それならば口にしなければ良いだけの事だが、なぜかロヴィーナはそれが出来なかった。
寧ろ幾度口にしても足りた気がせず、思いは募る一方である。
アントーニョは躊躇いがちに彼女の頭に触れた。
彼女がじっとしていると、今度はその頭を撫で始めた。
ロヴィーナは思わずアントーニョの方を勢いよく向いた。

「ごめん、なぁ」

ロヴィーナは暫く目を見開いていた。
それは何かに耐える表情にも似ていた。
アントーニョがたじろぎ手を引っ込めたのと、彼女の両眼から涙が溢れ出たのは同時であった。
彼女は泣くまいとしていたのだ。
普段強気で傲慢なロヴィーナの突然の涙にアントーニョは狼狽した。
首の角度はアントーニョを見上げる形のまま、呆けたように涙を流すロヴィーナは痛々しくて見ていられない。
アントーニョは強く彼女を抱き締めた。
突然のその行為に最も戸惑ったのは彼らふたりの鞄らしく、アントーニョの背で歩行に合わせて揺れていたスポーツバッグとスクールバッグは彼の背でぶつかり合い鈍い音をたてた。

「ロヴィ…!」

骨が軋むような痛みがロヴィーナの内部を走った。
そろそろとアントーニョの背に腕を回す。
今度こそ溢れそうな思いを耐えるすべを思いつかない。
アントーニョの突然の行為の理由を考える余裕すら彼女にはなかった。
ただまっすぐな彼への思いだけがある。

ロヴィーナは上体を逸らし、アントーニョから離れた。
そして腕を首の周りに回し直し、深く深く口づけた。


えーと、あのー、リク主さんの意向とはかなり違いますよねこれ。
てかひとがひとを好きになる瞬間て想像出来ぬ!(笑)

もうちょっと続くよー。
2009/07/02 (Thu) 11:20