喧嘩を、した。
別に珍しいことではない。
ただいつもなら思う存分やりあった後は、仲間と話したりしているうちにどうでもよくなっているのに、サンジにとって今回のは違ったらしい。
じわじわと怒りが沁みわたるように、嫌味っぽく笑みが少しずつ欠け、ついに消えたと思った時には本人の姿もなくなっていた。
別に用事があるわけではない、だから探しているわけではない。
そう自分に言い訳しながら、ゾロはブラブラと船内を歩き回った。
探しているわけではないから、見つからなくても別におかしくはないし困らない。
──なのだが、どうも胸のあたりがもやもやする。
サンジの姿はいっこうに見当たらなかったが、しかし、存在が消えてしまったわけではなかった。
キッチンにはつまみが置いてある。
アクアリウムバーには酒とグラスが置いてある。
男部屋には洗ったゾロのシャツが畳まれてあり、
展望室の灰皿には煙草の吸殻があった。
姿は見せないのに、ゾロには見える。
自分は悪くないと思うし、何がそんなに気に触れたのかもわからない。
まァそのうち出てくるだろ。
そう思いながら、ゾロはシャツを着替え、酒とつまみを持って、展望室でひとり酒を楽しむことに決めた。



