5月3日(土)予定にしていませんでしたが、
突然思い出したかのように、
ジャズボーカリスト・酒井俊さんと、芳垣安洋 (ds)&ナスノミツル (b) とのインプロヴィゼイション・グループ「アルタード・ステイツ」のギターリスト、内橋和久さんとのデュオを観に行きました。
酒井俊さんは、ジャズスタンダードナンバーをモティ―フにしていますが
「単なるスタンダード」ではない、
「創作サウンド」
をリスナーにみせてくれます。
そして、多方面で活躍するフリ―ジャズ、インプロヴィゼイションサウンドのア―ティスト方と共演しています。
そういった多種多様な組み合わせで行うライブの中、私が選んで行く演奏形態は、チェロ・坂本弘道さん、ピアニ・田中信正さん、ドラム・外山明さんが参加されている編成が主です。
よって今回のような、終始全て
「ギター+ボーカル」
のみの編成ライブを観るのは初めてでした。
エレキギター一本とボーカルだけの編成。
正直なところ、聴く前までは
「面白くなかったらどうしようか」
と、一流のお二人に対して口が裂けてもいえないことを考えていました。
というのも、
以前、4人編成ライブ中、内橋さん以外のエレギターーと酒井さんのデュオを一曲聴いたことがありました。
感じた印象として
エレキギターそのものの空間の深さに限界があるのと、
その時弾いていたア―ティスト自身が、出だし1フレーズ奏でるだけで、ジャズスタンダード畑出身であることが分かってしまうくらい、音そのものの発想が完全に
「コ―ド理論」となっていました。
よって、インプロヴィゼイションの要素が必要である酒井さんとの創作思考と、ずれが生じていたことで、
「エレキギター+ボーカル」デュオに対して、期待外れな印象が、私の潜在意識の中に根強く残っていました。
そしてもう一つ、エフェクタ―を使うにせよ、アコ―スティック楽器とエレキそのものではやはり
「音の太さ、響」
において歴然の差があるとも思っていました。
…が、内橋さんは違いました。
エレキギターを持ち変えること一切なく同じ楽器のままで、酒井さんの声の質感にあった音を見事に出していました。
しかも生楽器と比較する上での、エレキ特有の
「空間性浅い響」
を、エフェクタ―の使い方を多種多様にし、自身の音をル―プさせながら質感の違う音を対比させることで音幅を広くてしているワザは、空間性を出す上で視覚芸術の本質と共通したものがあり、実にに見事でした。
酒井さんの歌声も、普段私が聴いている3人〜4人編成より声幅がより鮮明に輪郭強く聴こえました。
「下手したら一人でもインプロ十分やれるのではないか‥」
と思えるほど、複数でやっている時と変わらないサウンドの深さを感じました。
今回のデュオを観て聴いて、改めて思うこと‥
酒井さんが打ち出す歌の旋律の動きと質感、それにともなう対相手の音との対比からできるサウンド空間は、
酒井さん自身のテーマ性=酒井さん自身の心の形を表すメタファーでした。
酒井さんの旋律の動きから形創られる微妙なバランス空間と質感覚を肌で感じる度、酒井さん自身でしかない精神性がそのままサウンドとなって表面化していて、聴いている私の心までも抉られる思いでした。
また違った意味で、涙ぐんでしまいました。
「あ―あ‥絵筆でならすぐ描けることが、声となると身体が言うことを効かない(涙)
いい加減何とかならんかな‥トホホ‥」
と、いつものことながら
自分の力不足にヘコむ帰り道でした。。