海と見間違ったのだ。
ホースを手に、水を撒き散らしながら坂をおりていく。
この街に住む女の子が先頭に立って案内してくれる。私はついていけば良いだけだ、通行人に水鉄砲くらわせることも気にせずに。
途中立ち寄った商店で店の者が、目的地はこの場所から遠くないという。
緩やかなカーヴを描く坂を曲がったその先に、寥廓たる海が拡がった。
いや……。
海ではなかったのだ。
それは砂海。風に晒された白い砂が、流動する波に見えたのだった。
日に焼け、乾いた真砂は煌めきながら潮を描く。
空は水色というにはあまりにも水色で、ただただ宏大で、ただただ空虚で、ただただ静寂が待つばかりだった。
水車のような遊具がある。いや水車というか、まるで巨大なハムスターの回し車のようだ。
砂の海に聳え立つ巨大で色鮮やかな遊具。
静まり返ったさみしい砂の遊園地。
握りしめたホースのビニルの感触を思い出す。
思えばあのホースは一体どこから伸びていたのだろう?ずいぶん坂を降りて来た気がするのだ。