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とげとげのうめきち
うめきちはとげうめ。 おとなになるまではとげとげで、おとなになったらとげがぬけてつやつやのうめになる。
「あ、うめきち、おさきに!」 となりにいたとげうめが、おとなになってくるりとじめんにおりてった。 ずっといっしょのとげうめだった。 「うめきちもはやくこいよ!」 「うん!きっともうすぐさ!」 「あ、とりが、きた!おおい!のせていってくれ!じゃあな、うめきち!ありがとう!ずうっと…」
あっというまにとおざかり、ことばはとちゅうできえてった。 とりのせなかにのって、となりのうめはとおくへとおくへ。
それから、
なんかいもあめがふり、 なんかいもかぜがふき、 ひがてり、 じかんがすぎた
だけどうめきちはまだとげとげのとげうめだった
「ぼくはもう、ずうっとこのまんまだ。とげとげがいたくて、だれもともだちになっちゃくれないよ」
とげうめはとげとげのあいだ、そのとげとげにまもられて、ぷよぷよぷるぷるとしたみをつよくしていく。 おおきくなる。 つよくなる。
とげとげがとれたら、 そのすずのようなからだをならして、 とおくとおく、 どのとげうめもいないばしょ、 だれよりもとおいばしょをめざす。
そしてそこでねをおろし、 おおきなとげうめのきになるのだ。
とりたちはもう、みなみへいってしまった。
おーい、おい、
とげとげのまま、ひとりになったうめきち、 よばれたきがしてめをあけると、 そこにはみみにけがをしたしばいぬがいた。
「ああ、やっとみつけた!とげうめ、きみはうめきちだね」 「そうだよぼくはうめきちさ。まだただのとげうめだけれど」 「わたしのともだちがみなみへずいぶんいったところで、きみとおなじこのきからやってきたうめにたすけられたんだ」 「あなたのともだちを?ぼくたちうめがどうぶつをたすけたの?」
ともだちがにんげんにつかまりそうだったとき、 そらたかくいたうめのこが、まっすぐそいつにぶつかって、そのすきにともだちはにげのびた。 うめは、 そこにねをはることになった。 ねをはるすこしまえ、 にんげんがいなくなってからそこにもどったともだちが、ないておれいをいったらこういった。
ぼくのとなりにいた、あのとげうめがしんぱいだ。 ぼくたちはとげとげで、 ほかのいきものや、ぼくたちのなかまにすらふれられず、 おとなになるまでじいっとたえるんです。 それはこどくで、つらくて、うめになるまえにおちてしまうのもいて、ぼくだってあぶなかった。 とげうめはとげがとれるまえにおちたら、 ねをはることもできずしんでしまうんです。
でもとなりのあのうめきちが、 かぜがまいにちちがうこと、 ひのひかりはまぶしいとやさしいがあること、 あめにもねいろがあること、 いろんなことをはなしてくれた。 このきからじゃみえないとこをゆめみた。
だからぼくはこわくなかった。 うめきちはすこしこわいっていってた。 だからかな、 うめきちのとげはぼくらよりすこうしだけとげとげがおおくてかたかった。
「だから、きみがしんぱいだって。」
しばいぬのはなしをききながら うめきちはぽろぽろないた。
「わたしのともだちはあしをいためていて、ここまでとうていこられなかった。わたしはわかくて、ともだちにたくさんせわになったから、きみをさがしにきたよ、うめきち。」 「けれどぼくはこわいよ、あのうめにいったのはつよがりさ、すてきなせかいがまってると、そうおもっていたかったんだ。にんげんもこわい。とりも、きみたちいぬもこわいよ!」
ぽろぽろぽろぽろ、 うめきちはないた。 とげはますますとげとげに、ちくちくつよくなった。
こごえるきせつがきて、ゆきのふるひもふえた。 それでもしばいぬはうめきちだけになったとげうめのきにきて、 しばいぬのみたせかいのはなしをした。 それはおなかがぺっこぺこにへってたおれそうなときたすけてくれたともだちのはなしだったり、 わなにかかってみみをきずつけられたはなしだったり、 さざなみをいっしょにみつめながら、いつのまにかねむったようにしんでいったともだちのことだったり、 はてなくつづくようだったあめのあとの、くもまからこぼれおちるひかりのまっすぐさだったり、、 たのしかったり、 こわかったり。 しばいぬのはなしてくれるせかいの、 なんとうつくしく なんとひろく なんとおそろしく そしてわくわくとすること。
そしてしばいぬはうめきちのはなしをきいてくれた。 かぜがけもののこえのようにうなっていても、となりのうめとよりそうことすらできなかったこと。 ふあんなきもちになったらうたをうたって、 ひとりよりみんなで、 あわせていったらひょうばんで、 たくさんのとりやむしがきてくれて、 そのとりやむしたちにはこんでもらい、 たびだつうめたちにおれいをいわれたこと。 そばにいたうめがあきらめてしまったひのこと。 じぶんのこと、とげうめのこと。
もうそろそろ、ゆきがここをおおう。 そうしたらさすがにしばいぬはいられない。 どうしたらいいのか、 うめきちはわかっていた。
しばいぬがきてからなんどめかのよる、 うめきちはゆめをみた。 となりのうめがいたころのゆめだ。
ねぇ、うめきち、 ぼくはもうすぐ、とげがとれるきがする
なんでだい?わかるの?
うん、 なんだかわくわくとして、ちからがみのうちがわからわいてくるんだ。
そうなの…ぼくはすこしこわいよ。どうなるかわからないじゃないか。
なんだろう、ふしぎなきもちだよ。ぼく、こわいよりつよいなにかでいっぱいなんだ。
まだあさになるまえに、 めがさめてまたうめきちはないていた。
とげうめのとげとげがあるままおとなになれたらいいのに。 そうしたらこのとげがずっとまもってくれるのに…。
けれどそれじゃあしばいぬをきずつけてしまう。 わかっているのに…。
きのしたがさわがしくて、うめきちはもういちどめがさめた。
「しばいぬ!!!!?」
とげうめのきのしたにのらいぬがいると、 ふゆのえものをさがしにきたにんげんにみつかった きのうえににげていたふゆのとりにおしえられた。 しばいぬはたかいおかねでうれるんだ。 「どうしよう!!」 「どうもこうもないさとげうめ、わたしたちもにんげんはこわいさ」 「でも!!!でもつかまったら…!」 「おまえはとげうめだろ、そのとげがあるじゃないか。」
しばいぬはにげるけれど、 にんげんはぶきをもっている。 ばんっと うってしまっては、やすくなる、 だけどそれでもねうちはあるんだよ。
とりがいいおわるまえに、 うめきちはみをふるって、いきおいよくまっすぐに、にんげんめざしてとびこんだ
はやくはやく、 あらしのひのあまつぶよりもはやく、 じめんのえものめがけてとぶとりよりもするどく、 おりてくうめきちのとげはびゅんととんで、にんげんのめをつきさした。
はらわれころがりおちたうめきちを、びっくりしながらすぐくわえてしばいぬはかけだした。
すこしはなれたおかのうえ、 むちゅうではしったしばいぬは、 いきをきらしてうめきちをくちからはなした。
「とげうめだろ、ばか、うめきち…とげうめなのに…なんてこと…!!」
とげうめはとげがとれるまえにおちたら、 ねをはることもできずしんでしまう。
ぽろぽろぽろぽろなくしばいぬと、 はんたいにうめきちはわらった。
「しばいぬ、ぼくはわかったんだ。 あのうめがいってた、ちからがみのうちがわからわくってやつ。 あれはゆうきってやつだね。ぼくのとげがとれなかったのは、とげがなくなってもいきていくゆうきがたらなかったんだね。」
「ああうめきち、わたしもわかったよ、うめきちのとげがとれたのは、わたしをたすけようとしたそのうめきちのこころそのものが、きみのみにおさまらないぐらいにあふれたからだ。ずうっと、ずうっときみのなかにあったんだよ。ずうっとずっと、きみのなかにあったつよさだよ!」
「よかったなぁ、さいごにうめになれた。」
「うめきち!うめきちはやさしいうめだよ!あのうめだっていっていた、きみのおかげだって。だれよりもやさしいゆうきのあるうめだよ!わたしのせなかにきみをのせて、いろんなところをみせてあげるから、だから…!!」
とげのとれたうめきちは、 つやつやきれいなうめのみに、 しばいぬのながしたなみだのしずくをしっかりうけとめて、 あさひをあびてきらきらひかった。
「おねがいがあるんだしばいぬ、ぼくのかけらをひとくちたべてはくれないかな。そうしたらぼくは、きみとどこまでいけるぞ、って、おも、」 「わかった…!わたしがきみのめになる、ずうっといっしょに、いろんなところへいこう…!!うめきち …!!」
それきりうめきちはだまってしまった。
たかいおかのうえ、 つやつやうめのみがなるうめのきがあるんだ。 このあいだそのねもとでねむるようにしばいぬがなくなったって、あちらのやまのとりがいっていたっけなぁ…。
おわり
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