「紫センブリ」
秋晴れの今日、忍野の高座山に咲くムラサキセンブリを探しにでかけた。御殿場からは国道で「篭坂峠」を越える方法のほかにもう一つ、「三国峠」から山中湖の東岸に抜ける道がある。眼下に「富士スピードウエイ」と御殿場市街地、右に愛鷹の山々、左に箱根連山、中央はるかかなたには駿河湾とうっすら伊豆半島の山々までが一望できる尾根道だ。路傍に紫色のトリカブトが美しい群落を作っていた。「明神峠」からは下りになって「パノラマ台」で一休み。広大なススキの原野で銀色に光っているよ。ここからは山中湖の全貌とその上にそびえる富士山、雲がなければ遠く南アルプスの山並みまでが見えるはずの絶景の展望台なんだ。
紅葉が少し始まった山中湖の北岸を走って「花の都公園」に来た。左にコスモス、右に百日草の畑が広がって観光客が写真撮りに楽しげだ。「高座山」は忍野中学校の裏山で三角形の草原の斜面だから遠くからもよく見える。この山に絶滅危惧種の紫センブリが咲くことを知ってからもう10年になる。山頂近くの急斜面でけなげに咲く紫センブリに今日もたくさん出会えて嬉しい。このブログを読み返して見ると2013年10月、一人で高座山1304mに登る途中、下山してくる3人の女性に出会って初めてこの高貴な紫色の星形の花を教わった。きわめて珍しい花で石灰岩質の土壌を好みEvening Starという粋な別名をもつと・・・
今日は木曜日。「裾野教室」があれば授業の内容が書けるのですが、今年4月以来しばらく休止しているので、「言語学と私」について話してみましょう。今日はその3回目。
大学3年生を終える3月のある朝、流山市の自宅で新聞紙上に見つけた大きな全面広告に眼が惹きつけられた。「1966年理論言語学セミナー受講生募集」だった。渋谷駅前にある英会話学校「テックTEC」の主催で、言語学の各分野の最高峰ともいえる大学教授の顔ぶれに驚かされた。こんなすごい講座がなんと受講料無料だとは!早速申し込んで選抜試験に合格したよ。東大の音声学「服部四郎」、慶応大の言語社会学「鈴木孝夫」、早稲田大のマルチネ研究「川本茂雄」に加えて、東大のチョムスキー研究「藤村靖」の4つの講座を私は選択した。
5月から週に2回2科目ずつ、大学の授業が終わった後JR渋谷駅前にあった「東急ビル」の7階に通い、10名くらいの受講生と共に夜学が始まった。隣の席には早稲田大のある教授が着物と袴姿で出席されて最新の言語理論を学びとろうとしていた。60年近く今も続くこのセミナーの第1期生としての誇りを私は大切にしているよ。
母校の東京外語大で私は言語学を徳永康元教授に師事していた。先生は専門のハンガリー語に加えて世界の言語の顕学で、ゼミでは日本語の金田一春彦先生(アイヌ語研究の金田一京助の長男)も加わってアフリカ言語の研究会に参加した。しかし、当時の日本の言語学は「比較言語学」が中心。一方アメリカの学会では隆盛を誇った「構造言語学」に異を唱えて、MIT(マサチューセッツ工科大学)教授のノーム・チョムスキーが新たな言語理論を発表した。それがSyntactic Structures(統語構造)(Mouton, 1965)で幸運にも発売の翌年(1966)にその原書を手に入れ、MIT研修中に学んできた東大医学部の藤村靖教授から直接教わることができたのだった。 尾上
