【※重要なお知らせ】Alfoo有料化への移行に伴う重要なお知らせ。
ときめきの居場所


勝っても負けても /海賊
「うふふ、みんなありがとっ」
 ナミがほくほく顔でカードを開く。
「最後にロイヤルストレートフラッシュかよー」
「しかもスペード! さっすがナミさんっ!」
「褒めてる場合かよ。てめェが一番負けてるくせに」

 夕食後のダイニングではじまったトランプ大会は、はじめは全員で楽しくババ抜きなどしていたのだが、途中からベリーを賭けるポーカーに変わった。眠くなったルフィとチョッパーが抜け、嫌な予感に大人な3人が逃げて、ナミに首根っこを掴まえられたウソップ、ゾロ、サンジが餌食となったのだった。一味でする賭け事で、ナミが負けたことはない。割とみんな顔に出てしまうのもあるが、天性の運もきっとある。
「私はこの回で降りるわ。眠くなってきちゃった」
 そう言った最後の回で最強の役を持ってくるのだから、誰にも手の打ちようがない。

「どうする?」
 ナミが抜けたら、3人でベリーを賭けることもない。夜も更けてきたことだしとサンジが訊くと、ウソップが手を上げた。
「おれも抜けるよ。昨日の晩ちょっと夜更かししちまったから、さすがに眠い」
「そうか。じゃあお開きにするか」
 サンジがカードを片付けようとすると、「ちょっと待って」とナミが遮った。
「最後にふたりでもう一勝負したら? あんたたちでベリーを賭けてもしょうがないから、そうね、『勝ったほうが負けたほうの言うことを、なんでもひとつ聞く』なんてどう?」

*

 その後ナミが挑発したものだから、ゾロとサンジはあっさりと一騎打ちの勝負をすることになった。その前にとナミがゾロを連れて行ったので、ダイニングにはサンジとウソップが残された。
「あーあ。まんまとナミの挑発に乗っちゃって」
「何を言うか! ナミすゎんの提案だぞ? いいに決まってるだろ」
 どうせマリモも飲むだろうとか言いながら、サンジが安いワインとグラスを3つ持ってくる。ナミはそのまま女部屋に行くだろうが、もし戻ってきたら、もっといい酒か別の飲み物を出すのだろう。一杯だけワインを入れて、サンジはそれをウソップに渡した。
「サンキュ」
 寝る前に少しだけ飲むとよく眠れる。ちょっと前にウソップが言ったことを、覚えていて出してきたのだ。ウソップはサンジのそういうさりげない優しさが好きだ。
「なァ、もしお前が勝ったらさ」
 だからウソップは、サンジが幸せだといいと、いつも思っている。
「ゲームだったら、言えるだろ? たとえば『ゾロの一晩をくれ』とかさ」

*

「ねぇ、わかってるんでしょうね」
「何がだよ」
 ちょっと手伝って、なんて呼び出されて、用事があるわけでもなさそうなナミに、ゾロは眉を顰める。もう、とナミは溜息を吐いた。
 ナミは、ゾロが恋をしていることを知っている。出会った頃は『何か気になる』という様子だったのが、だんだん目で追う頻度が増え、視線が熱っぽくなっていった。直球勝負のゾロに「好きなんでしょ」と直球で訊いたら盛大に『?』をまき散らしていたが、それで自覚したようだった。確認したことはないが、ナミの見たところ、サンジも同じように思っている。
 賭けポーカーでみんなの財布を空っぽにするナミだが、もちろん仲間のことは全員好きだ。ゾロは戦闘になると強くて頼りになるが、普段はなんだか手を引いてあげたくなるようなところがある。だから、ゾロの恋が叶えばいいと、密かにずっと思っていた。
「チャンス。作ってあげたんだからね」
「だから何だ」
「あんたが勝って、もらっちゃいなさいよ。サンジ君の一晩」

*

 真剣な顔で、勝者が敗者に囁く。
「お前の一晩を、おれにくれよ」
 その言葉に、敗者は目を丸くして、笑った。
「それ、おれの欲しいモンと、一緒だ」


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気がつけばいつもこの組み合わせ(サンジくんとウソップ、ゾロとナミさん)
15/09/03 (Thu) 23:11



なりゆきと結果 /とらきつね
「食いモン探してんのか?」
 高いところから降ってきた声に、トラは顔を上げた。高い高い木の上のほうに、ぴんと立った大きなしっぽが見える。
「違ェよ。腹は減ってねェ」
 トラが言うと、しっぽがふさふさと揺れながら少しだけ低い枝に下りてきた。キツネだ。
「じゃあ、なんでさっきからここを何回も通ってんだ」
「別に。寝床に帰ろうと思ってるだけだ」
「なんだ、迷子か」
 どうしようもねェトラだな、とキツネが笑う。
 キツネの右目の上で、まるで眉があるみたいに毛の癖がついていて、その外側でくるりと渦を巻いている。それには愛嬌があるが、毛の色は夕日の当たった麦の穂みたいな黄金色で、すらりとした身体には妙に色気があった。
「トラの寝床って言われてる場所なら知ってるけど。お前、おれのこと食わねェ?」
 揺れるしっぽに、トラは釘付けになる。
「腹は減ってねェって言っただろ」
「約束」
「食わねェ。約束する」
 キツネはじっとトラの目を見た。
 トラの毛は、全体が白――というよりはむしろグレー(薄汚れている)で、縞の部分は苔のような深い緑をしている。緑のトラは、必ず約束を守る。この森にはそう伝わっている。
 ぴょんぴょんと身軽に木の枝を跳んで、キツネはトラの背に乗った。
「しょうがねェな、案内してやるよ。まずここを右だ」
 しっぽがふわふわとトラの背を撫でるのをくすぐったく思いながらトラがまっすぐ歩き始めようとすると、キツネは後ろ足で容赦なくトラの背を蹴った。
「右だっつってんだろ!」

*

 そんな風にして出会ったトラとキツネは、同じように時々キツネが道案内をしたり、昼寝をするトラの腹のあたりでキツネが暖を取ったり、トラの捕ってきた獲物をキツネが料理して一緒に食べたりして、過ごした。
 森には時々人間が来て、そして時々忘れ物をして帰る。キツネの持っている調理道具は、すべて人間の忘れ物だった。キツネは前足を器用に使って、大きな獲物を捌き、切り分け、煮たり焼いたりした。その味は格別で、トラはキツネの料理を食べて以降、獲物を狩ったら必ずキツネのところへ行くようになった。

 目を覚ました時から、血の匂いがしていた。巣穴を出たら、得意げな顔で獲物を咥えたトラがきっといる。今日は何だろうな、そう思いながら、キツネは巣穴を出た。
 予想通り、そこにトラがいた。しかし、いつものように胸を張って立ってもいなければ、獲物を傍らに置いてもいない。
「おい」
 寝ているのだろうかとキツネが呼びかければ、トラはグルルルと低い声で唸った。
「気をつけろ。罠が仕掛けてある」
「えっ……?」
 見れば、トラの後ろ足は、両方ともがっしりと罠に挟まれて、だらだらと血を流している。血の匂いは、トラのものだったのだ。トラは自分でその罠から逃れようとしたが、大きな前足ではうまく外すことができなかった。
「早く呼べよ! 待ってろ、いま外してやる」
「気をつけろよ! ほかにも罠があるかもしれねェ」
 トラに言われて、キツネは慎重に近づいた。どうやら罠はその二つだけのようだった。
「よし、大丈夫だ。これなら外せる。暴れんなよ」
「荒くやってもかまわねェ。もうちょっとしててめェが出てこなけりゃ、自分で足を斬ろうと思ってた」
「バカか、てめェは!」
 キツネの巣穴の前にきっちり置かれた罠は、どう考えてもキツネを狙ったものだ。トラはそんなことは一言も言わず、キツネを呼ぶこともせずにただ待っていたのだ。慌てて飛び出てきたりしたら、罠に気づかず危ないと思ったのだろう。
 もう約束なんかなくても、トラが自分を食うことはないだろうとキツネは思っていた。友だちだかなんだか、よくわからないが、信頼関係はすっかりできていた。

「よし、取れた」
 トラの足が、ようやくすべて自由になる。途中でキツネの手が滑って余計に罠が食い込んだりもしたが、トラは懸命に耐えた。キツネは人間の忘れていった消毒薬をトラの足にかけ、酷いほうにだけ包帯を巻く。トラの足は太くて、両足分には足りなかったのだ。
「お前の寝床まで歩けるか?」
 訊きながら、キツネはてきぱきと調理用具をまとめた。
「何やってんだ?」
「罠を仕掛けたってことは、人間が様子を見に来んだろ。しばらくここには住めねェよ。お前も足を怪我したままでここにいるのはヤベェ」
「そうか」
 トラは前足に力を込めて、体を起こした。
「歩けるな。行こう」


 ゆっくりゆっくりと、トラとキツネは歩いた。トラの寝床に着くまでかなりの時間がかかったが、幸いにも罠を仕掛けた人間に見つかることはなかった。
「住むとこねェし、おれ、しばらくここにいていいか?」
 トラの寝床は、深い茂みの中にある。ぐるぐる回りながら落ち着ける位置を探すと、キツネは持ってきた調理道具を置いて、座った。
「おれなら大丈夫だぞ。お前の気に入りそうな巣穴、探しに行けよ」
「バーカ。てめェなんざ心配しねェよ」
 そっぽを向きながら言うキツネの頬が少し赤い。トラはそれに気づいて、「赤い」と言った。キツネはそれを勘違いして、心配そうにトラの足を覗き込んだ。
「ああ……。やっぱまだ血が出てくるな。近くに水場はあるか?」
「すぐそこだ」
 トラが指差すほうに、キツネは鍋を持って走っていく。すぐそこと言ってもトラが行くたびにかかる時間が違うので、遠くに移動してなけりゃいいがと思って待ったが、キツネはすぐに戻ってきた。
「ほんとに近ェな。いい場所だ」
「ああ、今日は近かったか。よかったな」
「?」
 キツネは疑問に思いつつ、それよりも、と汲んできたきれいな水をトラの傷にかけて洗った。
「なァ、舐めてもいいか」
「ああ。そうしてくれると助かる」
 水に濡れた毛の隙間から、まだじわりと血が滲んでくる。キツネはそれをぺろぺろと舐めた。
「お前の血の味がする」
「そりゃそうだろうな」
「……おれがお前を食ってるみてェだ」
 じわり、と。今度はキツネの目から、涙が滲んできた。
「ごめんな、おれのせいだ。おれを狙った罠だったのに」
「てめェが仕掛けた罠でもねェだろ。なりゆきだ。気にするな」
「そうだけど、でも……」
 ぽろぽろと涙をこぼしながら、キツネは懸命にトラの傷を舐めた。涙のせいでいつもはふさふさつやつやしているキツネの毛がぺたりと体にはりつき、よりしょんぼりして見える。初めて見たときからトラが気に入っているキツネのしっぽにも、ぽとりと涙が落ちた。
「わかった。じゃあお前、責任とってずっとここにいろ」
「責任?」
「そうだ。てめェのせいじゃねェけど、てめェの気が済まねェんだったら、おれに一生メシ食わせろよ。もちろん、足が治ったらおれは獲物を捕ってくる。お前はそれを料理して食わせてくれればいい」
 キツネはきょとんと目を丸くして、トラの足を舐めるのを忘れて顔を上げた。
「――でもお前、繁殖期になったらレディんとこ行くだろ」
「行かねェ。お前がいい」
「お、おれとは繁殖できねェって!」
「それでもいい。お前がいい」

*

 森の仲間に会って「なんでトラのところにいるんだ」と訊かれると、キツネは「あの苔が生えたみてェなトラ、一匹だとなーんもできねェんだよ。しょうがねェヤツなんだ」とものすごく嫌そうな顔をしながら答える。それを聞いた仲間たちが「それはそれはごちそうさま」と言うのに、キツネは不思議そうに「おい、おれお前になんも食わせてねェだろ」と首を傾げるのだった。
 キツネは相変わらずトラの腹のところで眠るのが暖かくて一番好きだけれど、トラはもうちょっと後ろ足側にいるほうが好きみたいだ。キツネはときどき、そのあたりを舐めてやる。トラもときどき、トラの好きなキツネのしっぽを眺めながら、その下あたりを舐める。
 もういっそ、丸ごと食っちまえばいいのに。そんなことを考えながら、でも約束は約束だしな、とキツネは今日もおいしい料理を作っている。


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「書いたことのないあの設定を書いてみよう」的な。
15/09/02 (Wed) 19:59


惚れた弱み /海賊
 出航予定を午後に控えて、仲間が続々とサウザンド・サニー号に集まってくる。珍しく早めに戻ってきたルフィは、船のそばに落ちていた紙を拾い上げた。
「これ、何だー? は、かった、してし……? あ、ゾロって書いてあるな」
 ゾロに手紙みてェだぞー! 大声で言って、びよんと伸びてサニー号に飛び乗ったルフィは、ゾロにその紙を渡した。なんだなんだと、皆がゾロの手元を覗き込む。
「やだ、何よこれ」
 ナミが眉を顰める。
『黒足は預かった。返して欲しければ剣士ロロノア・ゾロが一人で来い。』
 なかなかの達筆だ。
「ゾロ、何か心当たりあるの?」
「そういや、宿を出たときに、殺気出して見てるヤツがいたな」
 いわゆる連れ込み宿にサンジが面白がって入ったので、昨日は夕方のまだ明るい時間から、夕飯を挟んで深夜まで、それから早朝にと、濃密な時間を楽しんだ。「太陽が黄色いねェ」なんて言いながら宿を出たときに、視線を感じたのだ。サンジが「ありゃあ、てめェの客だな」と言い、ゾロもそう思ったので警戒はしていたが、まさかサンジを利用しようとするとは思わなかった。
「おーう、ゾロ暴れんのか? おれも行く!」
「バカね、ゾロ一人でって書いてあるでしょ。あんたが行ったら余計に大事になるんだから、やめて」
「えー……。じゃあゾロ、さっさと帰ってこいよー」
 つまらなさそうにルフィが唇を尖らせる。
 食料庫を見に行っていたウソップが戻ってきて、「買い出しは済ませてあるみたいだな」と言い、冷蔵庫をのぞいたロビンは「何かの下拵えもしてあるわ」と微笑んだ。
「じゃあ、そっちは心配ないわね。ゾロ、出航の時間には間に合わせてよ」

 ゾロが出ていくと、皆はそれぞれ出航の準備を始めた。午後にいい風が来そうだとナミが言うのだから、それに乗って行きたいのだ。サンジもそれは知っているから、出航までには帰ってくるだろう。
「サンジ、何でつかまっちゃったのかな」
「そりゃあれだろ、お前、サンジだったら美女に声かけられたら、瞬殺だろ」
「ああ、そうだね……」
 買ってきた医薬品や武器の材料を整理しながら、チョッパーとウソップが溜息を吐く。
「ぐるぐる巻きにされて、沈められていなければいいけれど」
「ちょーっとロビンさん! 怖いこと言わないでくださいよー」
「てめェら、ちったァ心配してやれよ」
 花壇に新しい花を植えるロビンは、フランキーに「心配してるわよ、とても」と微笑み、「やっぱり怖いです」とブルックの顔(頭蓋骨)を青ざめさせる。

「あーっ! つまんね!」
 サニーのヘッドに仰向けになって、ルフィはまだ唇を尖らせている。
 加勢が必要ならばもちろんついていったが、「見てるヤツがいた」と言った時のゾロの表情からすれば、必要なさそうだった。敵はゾロに挑みたい剣士か、個人的に恨みのある誰かか、そんなところだろう。
「ふふ。あんたよく我慢したわね」
 いつも率先して飛び出していく船長だが、しかしもともと人の喧嘩に手を出さないところがあるのはナミも知っている。理解はできないが、それが男というものらしい。
「敵もバカね。ゾロの弱みに付け込んだつもりかしら」
「弱みってなんだ?」
「惚れた弱みってやつよ」
「なんだそれ、そりゃあバカだなァ」
 あー、肉食いてェ。ルフィの思考は、すでに食欲に支配されていた。
「あいつらにとっちゃ、お互い強みにしかならないもんね」
 二人が戻ってきたらすぐにでも出航できるようにしておくこと。一味に、今することなんて、ほかには何もなかった。


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けど、お互いには弱いかもしれない。
15/09/01 (Tue) 20:32


ほぼ毎日ZS
別に強化月間というわけでもないのですが、9月は毎日なんか書こうかなと思っております。
しかし土日祝は難しいかなと思うので、「ほぼ毎日」。
サイトに毎日となるとちょっと手間がかかるし、ついっただと恥ずかしくて死ねるので、手軽かつ訪問される方の少ないここで、こっそりと。
あとでサイトに移動します。

前からお題で書くっていうのをやってみたくて、月とサカナ(http://snao.sakura.ne.jp/)様の『恋人同士のお題20』からお借りします。
しかし恋人同士に限らないと思われます。……往々にして。
15/09/01 (Tue) 11:32


私が見ている唯一のアニメ
その名は名探偵コナン。

の、前のオープニングが、BREAKERZの曲で好きだったんですが、変わってしまった。残念。

9月はここでちょこっと文章を書きます(予告)。
15/08/31 (Mon) 2:02