チャンカーはマリオン


 ●●●  血圧
今日も朝から昏睡状態。会話も無い一日だが心は通わせているつもりだ。 昼僕の母と弟が福岡へ帰るのを病院の玄関まで見送ってマリオンの病室に戻ると、なんと嬉しい事に某医大のナースさん2人見舞いに来ていた。マリオンが意識を持っていればどれだけ喜んだだろう。しばらくマリオンを挟んで歓談。時々声をあげるマリオンも楽しんでくれただろう。医大のナースさん達が帰りマリオンの検温があり、ついでに僕の血中酸素を計ってもらう。マリオンがホスピスに入って以来 珊内のかもいユースのかあさんの娘さんがマリオンの世話をしてくれていて、マリオン・娘Yさん・僕・担当ナースさんで計り比べてみた。結果はなんとマリオン以外の3人は97程度、マリオンは満点でトップだった。呼吸も落ち着いていて、昏睡状態のまま長く続くのかと思ったりした その夜。担当ナースさんから話しがと廊下に呼び出された。
話しは、今夜の血圧が70代まで落ちた事、尿に混じる血が増えている事から いよいよ危ない時期に入ったので身内の方々に連絡を入れた方がいいと言われた。 今夜は寝ずの番になるだろう。
2005/06/15 (Wed) 20:40

 ●●●  感謝
去年の手術入院では2ヶ月少々マリオンに付き添った。その時は術後の回復が遅く毎日をヒヤヒヤして暮らしたが、先にあるのは回復しての退院だった。 今のホスピス入院生活の先には彼岸が待つ。全く付き添う意味内容が違うのだが、今もついつい退院をイメージしてしまう。
僕は感謝しています。家族・友人・マリオンを看護してくださる方々・マリオンのために祈ってくださる皆さんに。僕がこんなにマリオンと時間を共有でき、そして今マリオンの横に張り付いて居られるのはそれらの方々の経済的・精神的・実働的サポートがあってこそです。 優しい旦那様とか献身的介護とか言ってもらえますが、そう出きる環境を皆さんから作って頂いているからこそなのです。家族・友人・介護の方々・祈ってくださる皆さんに心から感謝致します。 吟とマリオンから ありがとうございます。もはや戦いの終盤ですが最後の最後まで奇跡を信じます。 しかしながら、いざの場合を考える必要もあり、マリオンの好きな音楽で見送る準備もしています。
マリオンは自己排尿が出来なくなりナースさんに下腹部を押してもらって排尿する。その尿には血と真っ赤なオリモノが混じる。今朝は血圧の上で86まで下がってしまった。
2005/06/15 (Wed) 10:57

 ●●●  昏睡
昏睡
今朝からマリオンは眠りつづけている。意識が覚せいすることは無く眠りつづけている。血液中の酸素量や胸の音や脈はしっかりしているらしいが、眠っている。だがきっとマリオンには辺りの人を感じ会話も聞こえているのだと信じたい。だからこそ皆話しかけるのだから。ストーマから出るウロこそイカ墨のような黒い粘液質な物が出ているが、前のようにウロと同じ物がオケツ、若しくは尿として排泄されることはなくなり、尿は普通の人と同じような尿になっている。 後はマリオンがブドウ糖の点滴だけの栄養でどこまで体力が持つかが勝負だと思う。口の中は血まみれで痛々しく食べ物・飲み物を口に出来るとは思えないし、点滴だけの栄養がどれだけマリオンの支えになるのか疑問だし。先行きを楽観できる事象はまったく無いがひょっとすると奇跡はまだあるのかとも思えてくる。
今日の昼前、マリオンはストレッチャーで運ばれで入浴。風呂は舞鶴から小樽のフェリー船中僕が担いでシャワーを浴びせて洗って以来だから10日ぶりの入浴だ。 シャワーに運ばれると同時くらいに僕はウィークリーマンションに戻り洗濯と4時間ほどの睡眠を取った。今日は一人でビール抜きで眠れた。 今日は朝からマリオンを見舞っていた僕の母が、どうもふらついているので心配になる。高血圧が出たのだ。今の僕にはマリオンで手一杯。取り急ぎ一昨日東京に戻った弟に電話して事情を話す。弟は明日朝7時の便でコチラへ飛んで来て母を連れて福岡行きのチケットが取れればそのまま母と同じ便で福岡まで連れて飛んでくれる事になった。助かった。  ココで母に倒れられたら僕も倒れることになっただろう。
夜 僕とナースさんがちょっと長話をしていたらマリオンが「オオオォォォン」と唸りをあげた。ジェラシーの叫びか? 僕がナースさんと話をする事でマリオンの意識が戻るのであれば僕は喜んで話をするぞ。たとえ戻った意識には僕に対する憎しみがあるとしても。
2005/06/14 (Tue) 21:01

 ●●●  危機感
立て続けに書く。今夜のこのホスピスは最悪だ。夜中1時にナースの交代があるが、2時過ぎても様子を伺いに来ない。尿パット交換や検温にいつもは来るのだが今日は来ない。そんな心配をしてる時マリオンがタンを詰まらせ苦しんだのでナースコールを押す。ナースセンターで鳴ってる音はするが誰か出る気配が無く、やっと来たのはコールして5分ほど経った後だった。その時マリオンのタンは落ち着いて事なきを得たが、僕は言う「ナースコールして5分もかかるってどういう事?緊急で手遅れになったらどーすんの」。男性ナースは弁解した「今夜はバタバタとしていて・・」。病院のナース配置数が不足してるのか、そのナースが怠慢なのかわからないが、ナースコールに即対応できない病院は最悪だし、しかもホスピスなんだよ ココは! 何かい! どうせ治る見込みが無い死に行く患者はおざなりでいいと言うのか。どーせ手当てしても時間の無駄とでも思ってんのか。
とにかくその場はナースを帰し、僕は自分でマリオンの尿パット交換と溜ったストーマの真っ黒なウロを処理した。 そのすぐ後、またマリオンのタンが詰まったのでナースコール。今度はすぐ来た。タンを吸引する。引き出されるタンは血まみれ。マリオンの口の中は歯茎からの出血が固まっている状態。 鼻や口から管を入れられ苦しみの声を吐くマリオンを僕は手足を動かさないように押さえ、間近で見る。涙が出そうだ。一日でも長く生きて欲しいが、苦しみ悶えさせるのは嫌だ。今マリオンから『まだ生きたい!』という気を感じ取れる。だから僕も頑張れるのだ。 とにかく今夜のこのホスピスは気を許せない。僕は完全徹夜でマリオンを守る。
2005/06/14 (Tue) 3:28

 ●●●  衰弱
衰弱
先日までベッド上で自力で上体を起こしていたマリオンだが、昨夜からそれが出来なくなった。言葉もハッキリした言葉はまるで喋れなくなり、もう会話は無い。マリオンの唸りに「何? どうしたいの? これ?」といった具合のやり取りだけがマリオンとのコミュニケーション。頬もげっそりして、腕や指先が気の毒なくらいに細くなっていた。もし健康な状態のマリオンであれば、きっとダイエット効果と喜んでいただろうが、今は絶望が形になって具現化しているとしか見えない。 そんな状態のマリオンを心配してマリオン父は今夜近くの僕の母が泊まっているホテルに泊まることになった。
先週のマリオン、先々週のマリオンと考え比べて振り返ると、桁違いの状態下降にこの先の見通しを落胆するしかなくなる。でもそれが今置かれたマリオンと僕との現実であり、ぶつかるべき事実なのだろう。 でも 僕は思う。 もしマリオンがこのまま言葉も喋れず体も動かず寝たきりでオシメが必要な状態で生き延びれるのなら、僕はこの先何十年でもマリオンを看ていこう、連れ添いたいと。しかしそれは非現実的であり、自分の経済的・社会的立場で考えても不可能な事なのだ、この日本では。 ホスピスに入院した当日医師から言われた「余命は週単位」の言葉がひしひしと身にしみて感じられる。 6月14日小樽のあるお店でエンドウミチロウというシンガーのライブがある。マリオンは昔から彼のファンであり小樽のお店もよく通っていたのだ。 僕は大阪でマリオンが具合を悪くした時に鞄の中から出しそびれていた手紙を見つけた。あて先はその小樽の店宛で中には店のマスター宛とエンドウミチロウ宛が入っていた。悪いと思ったが中を読んだ。内容は「現在再発したガンの治療のため大阪に居ます。ライブを見に行けないのがとても残念です・・・」といったものだった。出来れば僕がそのライブに行き録音させてもらいマリオンに聴かせたいのだが、今のマリオンを置いて小樽には行けない。せめて出来ることとして先週末僕が現状を説明した手紙を添えてその手紙を投函した。添えた手紙には「ライブ当日にマリオンは居るかどうかわからない」と書いたが、日付としてはライブ当日にはなったが、ライブ開始時間にはどうだろう・・・・・?
今夜も唸るマリオンに「俺はずーーーーーと一緒に居るぞ。絶対に離れないからな。安心して眠れ。ストーカーと言われても離れないからな。ストーカーじゃ安心できないか。」と耳元で囁いてやる。
2005/06/14 (Tue) 0:21

 ●●●  Dr,John
Dr,John
昨日から今日にかけてマリオン姉が付きっきりで付き添いをしてくれたので、僕は急ぎ必要な物を取りに珊内へ一時戻った。 マリオンの好きなドクター,ジョンを聴かせたいとCDを数枚持ってきたので早速枕もとでCDを鳴らす。アーティスト名にドクターとつくからには何らかの効果がある事を期待したい。 そんなわけで昨日の僕はマリオンの付き添い時間が本当に短かった。珊内では携帯が圏外という事と、一人で家に居るのが苦しくて苦しくて居たたまれなかったので急いで用をたし札幌へ引き返した。札幌に帰りついたのが夜10時半頃。数枚のCDとCDラジカセを持ってマリオン姉が付き添っているマリオンの病室へ急ぐ。今日から使い始めた新しい睡眠導入の点滴が効いてかよく寝ている。マリオン姉が「今日はゆっくり寝てください」と言ってくれるので、僕はウィークリーマンションへ戻った。しかし部屋に一人で居る事に落ち着けないのだ。息苦しさと不安と心細さ。脳みそが萎縮してしまい周りの全てが無機質で僕と大きな隔たりを作って遠ざかるような気持ちになった。 近くのホテルに泊まっていた弟を呼び出し僕の部屋で飲む。途中どうにもマリオンが気になり夜中3時頃マリオンの様子を見に行く。 病室に入るとマリオンは起きあがり詰まった痰をナースさんに吸引してもらった所だった。痰の吸引は鼻腔から管を入れるのだが、鼻管はマリオンにとって地獄の思いがある。去年の手術入院の際、腸閉塞を起こし太い管を鼻に入れられる事2回。お腹を切る手術と鼻管を比べても開腹を即答で選ぶくらいに鼻からの管に恐れを持っている。しかも今のマリオンは精神的にも衰弱しているからかなりの負担だっただろう。マリオンが落ち着くのを確認しマリオン姉に後をお願いして部屋に戻ってまた飲んだ。空も白んだ6時前、どうにか僕は眠気をもよおし弟はホテルへ戻る。 目覚めたのは昼前。5時間半は寝れた。また今日から毎晩マリオンの付き添いで頑張るのだ。 今日のマリオンは変わらず朦朧とした意識で時々言葉にならない声を発する。 2〜3日前まで一日にわずかながらまだ理解可能な言葉を吐いていたが、今日はまったく唸るだけのように聞こえる。しかし僕には、マリオンは言語能力に欠けてしまっただけで、感覚的には正常の状態より鋭くなっているように感じるのだ。だからマリオンの声は言葉としてとらえず、感覚的にとらえる必要があると思う。腎不全からの譫妄状態。それは傍目からの見解であり、本人は何を見て何を感じて何を発しているのかはわからないと思う。
2005/06/12 (Sun) 19:05

 ●●●  たばこ
本日のマリオン、セン妄状態ながらもわずかな活気あり。 僕がマリオン姉に付き添いを代わってもらった間の出来事。 マリオンはセン妄が始まりかけた6月1日からタバコを吸わなくなった。これは禁煙に良いきっかけと思ったのだが。
今日昼過ぎてマリオンは病室を出たがり車イスで散歩をしたらしい。その写真をマリオン姉が添付メールしてくれた。そのマリオンの勢いは止まらず、ついにタバコが吸いたいと言い喫煙したらしい。確かに喫煙を喜ぶのは反社会的だが、事情からしたら大きな驚きと喜びだった。 今日は福岡から僕の母、東京から弟が来た。
昨日 札幌大通り西16あたりにあるインロックカフェのマスターが見舞いに来て花を頂いた。今日はジャズライブの店 ジェリコのマスターが見舞いに来て花を頂いた。 こんなに花があると病室らしさが出るもんだなぁ。 マリオンの肺のレントゲン結果、肺には何も問題無し。採血結果は残念ながら腎不全・尿毒症は代わらず、いつ心停止しても不思議で無い状態は変わらず。危険な状態なのだ。 しかし今日は来訪者が多かったせいでマリオンの精神状態は緊張状態になり、夜はかなり興奮してなだめるのに苦労した。マリオンを多くの人に見舞ってもらいたい気持ちは単に僕のエゴであり、今の状態のマリオンには酷だったのだ。 どこまでも間抜けな僕なのだった。 睡眠不足で何を書いてるのか責任が取れないが、こんな状態でなければ悲しくて狂いそうなのだ。
2005/06/11 (Sat) 1:30

 ●●●  ホスピス?
昨日は昼前に熱を出したが夜は微熱はあるものの比較的落ち着いていた。しかし寝たと思えば起き上がり時に歩こうと立ち上がる事もある。意識混濁のマリオンが何を感じ何を求めるのか、時々言語としてでなく魂の振幅として感じ取れる。薬で激しい眠気がありながら起き上がろうとするのは、寝ると二度と目覚めないのではという恐怖心からだと感じた。体を揺する時はおむつが濡れてる。おむつを換える時ある事に気付いた。ナースさんがやってくれるおむつ交換作業を僕が手伝うとマリオンの機嫌が悪いのだった。若く健康なナースに嫉妬を感じるようなのだ。だから僕はおむつ交換はナースさんに任せるか僕ひとりでやる事にした。 医者の話しでは、マリオンの腎臓は腎不全をおこし尿毒症になっていて、カリウムがいつ心臓が止まっても不思議でない数値らしい。毎日ヤマを越えなきゃならない。マリオンの体力勝負だが、マリオンは食事を取れず。頼みの点滴はこのホスピスではあまりしてくれない。 ナースコールしてもなかなか来ない。検温・血圧も最小回数しか回って来ない。夜中の見回りもホスピスと思えないくらい少ない。 今朝マリオンが目覚
めグズッていた、おむつとすぐにわかった僕はナースコールをして頼んだ。その間僕は外にでて一服。わずか五分程度でマリオン部屋に戻るとナースが居ない。まさかもう終わったのかとマリオンのおむつを確認する。 中の尿取りパットだけ換えて背中あたりまでグッチョリのおむつはそのまま! 僕はあまりのいいかげんさに驚き怒りを感じ、次に来たナースに「どーなってんだココは!」と荒げてしまった。中にはちゃんとしたナースさんは居るが、ココはホスピスであり、終着が見えている患者が安心して時を過ごせるにはほど遠い。全くふざけたホスピスだ。マリオンが可哀想でしかたない。
2005/06/09 (Thu) 7:24

 ●●●  命
マリオン!

俺の命を吸え!
2005/06/08 (Wed) 3:32

 ●●●  ホスピス
ホスピス
朝早くから医大に行き、マリオンに付き添う。腎臓が人の3〜4倍に腫れ上がり腎不全をおこしかけている事で譫妄状態になっていると思われ、持病の統合失調症も相俟ってマリオンの意識は混迷しているのだ。
今日はわずかにマリオンの意識はハッキリしており、やっと今札幌に居ることに気づいてくれた。 しかしついこないだまでの大阪での事はすっかり記憶に無いようだ。病室のテーブルに「退院申請許可」の紙がある。 しかし我等は退院要請されたのだが・・・・
昼過ぎていよいよホスピスからお迎えの車がきた。ストレッチャーに乗せられたマリオンを去年手術当時から担当してくれたナースさんが病院正面玄関まで見送ってくれた。僕はマリオンに「ホラ、○○さんが見送ってくれてるよ。バイバイして」と言うと、マリオンは手を振ってお別れしていた。ナースさんにとっても辛い時だったと思うとやりきれなくなった。  ホスピスに着き担当医師から話があった。 そして更に打ちのめされることになる。
「極めて深刻な状態です、残りは1週間単位と考えてください」 僕は医大近所に取ったウィークリーマンションを中途解約のキャンセル料が安くなる2週間後にホスピス近所のウィークリーマンションに移るつもりであったが、どれだけキャンセル料で大きな損害が出ようが、明日早速ホスピス近所のウィークリーマンションに移るべく行動を取る事にした。 夕方までのマリオンは調子よかった。譫妄は続いているが まだ認識力はあり言葉も声もハッキリしていた。始めての病院での入院。マリオンにとってはどんなに心細いだろうと思い、今夜は付き添いで泊まることにした。夜になりマリオンの容態は変わり寒いと震え始め40度を越す熱を出す。意識は朦朧となり唸るような声を出す。 僕は恐くて仕方なかった。それを拭うようにマリオンの世話をする。 なんとか寝ついたマリオン、またすぐに唸りもだえ出すかもしれないマリオンを置いて、今夜は僕は最終前の地下鉄に乗って宿に戻った。 この1週間、僕の睡眠時間は一日平均2〜3時間で頭の中はフェリー船中のように揺れていて思考力は低下していてろれつは回らない。だが明日はウィークリーマンションを移る手続きをしなければならず、僕も少し休む必要があると思ったからだ。 が、しかし 夜は未だに寒くヒーターが必要な広いウィークリーマンションの部屋で一人頭をクラクラさせながらも寝れないでいる。

今回皆さんの祈りの力をお借りしたく思い、祈りをより具体的にイメージしていただくために、あえてマリオンのホスピスでの病衣姿を載せました。 どうか皆さんの力をお貸しください。
2005/06/08 (Wed) 2:48

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