数週間前に歩行時のよろめきから始まり、転んだりしつつも時々歩き回ることもあったが、ここ2〜3日で次第に起き上がる事も困難な状態に陥った。
逆にほとんど見えてなかった目が、朧気だと思うが人の居る方向へまっすぐ向かう程度の視野は戻ったように思え、
そしてほとんど声が出なかった鳴き声も、時折訴えるような鳴き声を発するようになった。
しかしどう贔屓目に見ても回復・復活の兆しは無かった。
元々自力での食事ができない状態で、お医者さんから「給餌をやめたらすぐに逝ってしまう」と言われていたが、苦しませたくない一心から見送る覚悟を決め、あえて一昨日あたりから強制給餌は最小限に。
そして28日夜、翌日朝から仕事がある奥さんには睡眠をとってもらい、休みである自分が徹夜で付きそう。
深夜のおさかなちゃんは寝た状態から急に声を発して起き上がろうとするが、身体の自由が利かず転ぶ。
それを見かねて抱きかかえ膝の上に乗せると、安堵するのか落ち着いた状態になる。
自分の布団でおさかなちゃんと枕を並べて横になる。
常におさかなちゃんの体のどこかに触れている状態を保ちつつ朝を迎える事が出来た。
起きてきた奥さんに夜は乗り越えた事を伝える。
昼間のおさかなちゃんはほぼグッタリの危篤状態。しかしまれに声を発する。
昼間は奥さんにテレワーク仕事をしつつおさかなちゃんの様子を見てもらい、何かあれば叩き起こしてもらうようにお願いして僕は仮眠を取る。
昼過ぎに一旦起きて急いで買い物に出かけ、急いで帰宅。
様子は変わらないようだったので、徹夜での睡眠不足解消でしばしごろ寝する。
夕方6時に仕事を終えた奥さんが18時半頃僕を起こした。
「呼吸の様子がおかしい」と言うのでおさかなちゃんの様子を見る。
呼吸と呼吸の間隔が15秒〜20秒と異常な状態。
これは毬音の臨終の時と全く同じ状態だったので、記憶が重なり一瞬にして恐怖と解決できない焦燥感と失意の入り混じった感情に襲われ、同時に間もなく終える命を見送る覚悟を腹に据えた。
起こされてから10分ほど後、最後の呼吸をして最愛のおさかなちゃんは逝ってしまった。
僕とおさかなちゃんの付き合いは9年10か月程度だが、奥さんはおさかなちゃんが赤ちゃんの頃出会ってからの付き合いだから16年近い。
喪う悲しみは大きいだろうけれど、この2年ほどはおさかなちゃんは僕と一緒に布団で寝る事がほぼ毎日だったので、喪失感と言うより絶望感を感じていた。
今夜ペット用の火葬車が来て荼毘に付す。
奥さんは仕事なので付き添うのは自分だけだが、泣き崩れてしまいそうで怖い。
毬音を見送った時、自分はこの人を看取るために出会ったのだと悟った瞬間があったが、
自分の人生に課せられた命題は引き合わせと見送りと感じているので、しっかりと見送らねば。









