乗馬中に馬が死ぬなんて、初めての経験に深く傷つき落ち込む若い恒石さんに、優しく声をかけた男性がいた。
「環境の変化に馬が対応できんかっただけやけん… おまえが落ち込むことはないぞ… しかたがなかったがよ……」
大杉さんという50歳代のこの男性と恒石さんは、この出来事がきっかけで親しくお付き合いするようになったという。
大杉さんは会社経営の傍ら趣味で馬を飼っていて、美しい海岸線や自分の山を馬に乗ってゆっくり散策するのが大好きな自由人♪
彼の愛馬「ピッコロ」の穏やかで優しい性格と、何より大杉さんご自身の暖かい人柄に触れるにつけ、全盲で乗馬初体験の僕でもなんとかなると恒石さんが判断して紹介してくれた。
大杉さんは、まず僕に徹底的に馬を触らせて、その大きさや形を把握させた。
経験上、全盲の僕が馬などに乗ろうとすると、おそらく多くの場合、何人もの人が馬を抑え、僕の手足を持ったり体を持ち上げてとにかく鞍上に乗せようとするだろう。
それだと馬も緊張するし、僕の方も全体の中の自分の位置関係が理解できずに不安なまま馬にしがみついてる感じになるだろう。
ところが、視覚障害者に接したこともないこの大杉さんは、まず馬に触れさせることによって僕にその大きさや形を理解させると共に、極自然に馬と僕の信頼関係を築いた!!
理屈ではなく、それぞれの立場になって考えられる大杉さんの優しさと大きさこそが、この賢明な判断力を生むのだろう!!
おかげで僕は鐙に足をかけて軽く一人で馬にまたがることができた♪
波打ち際を歩く馬の背中で風を受けながら手綱を持つ僕を見たテルが、「青い海をバックに馬に乗る佳さんの姿は、今まで僕が観た中で最高のシャッターチャンスだったのに〜……」とカメラを持ってないことをしきりに悔やんだ。
「堀内さんはほんまに全然見えんが?
柔らかい砂浜で大きゅうに揺れても全然バランスを崩さんし、浜へ降りるときの坂道での体重移動とか教えてなかったろう……
しかも片手にマイクを持って!!
初めてやと見える人でも両手で手綱を握りしめて固うなっちょうもんやに……」
馬を繋ぎながら、相変わらず穏やかでゆっくりした幡多弁で静かに驚きを表現してくれる大杉さん♪
そのとき、いきなりテルが「あっ!」と声を出したかと思うと、半袖シャツを着ていた僕の腕に生暖かいものが断続的に触れた。
乗る前は僕が触れただけで汗ばむほど緊張してたピッコロが、なんと自分から近付いてきて僕の腕を繰り返し繰り返しいつまでも嘗めた。
「おお、ピッコロか〜♪ 乗せてくれてほんまにありがとう♪ おまえも不安やったろうに…」。
そう言いながら、愛おしくてかわいくて彼女の顔中をなで回す僕!!
「あーこれは馬の最大級の愛情表現やねえ!」
暖かい大杉さんの声に思わずウルウルしそうになった。
「わしの連絡先は恒石が知っちょうけん、こっちに帰ってきたらいつでも連絡したや。 今度は一人で乗れるようになるよ。 馬はちゃんと知っちょうけん危ない所へは行かんけんね!」♪
乗馬ができることもさることながら、この極めて魅力的な大杉さんとかわいいピッコロにまた逢えるかもしれないって思うと嬉しくてたまらない♪
テルのおかげで恒石さんに出会い、恒石さんのおかげで大杉さんやピッコロに出会え……!!
やっぱり出会いは宝物だよね☆
ちなみに、この時の模様は来週の「きまぐれ」でOAします。
エリアの方は是非聴いてやってくださいね♪