暑い暑い夜に涼しい話題を一つ。
隣のM婦人の実家は、80歳の母親が一人暮らしをしていて、M婦人は毎日の仕事の行き帰りに必ずお母さんの様子を見に実家に寄る。
彼女がその実家で起こる奇妙な現象に気がついたのはつい最近のこと。
部屋の明かりを消すと古い目覚まし時計のベルが鳴る!!
当然照度センサーなどは付いていない。
しかも昼間や誰か居るときには鳴らないのに、一人の夜に明かりを消すと「り〜ん…」と必ず鳴るという!!
そのことを母親に言うと「もうずいぶん前から明かりを消したら鳴るよ」と平然と答える!!
不思議に思ったM婦人から相談を受けた僕は、霊視能力のある知人を紹介した。
その知人(Oさん)は、除霊などはしないが不思議な力を持っている。
たとえば、僕の遠い親戚に当たる人が家を建てると言っただけで、見たこともないその場所の風景を寸分違わず言葉にして、
「そこは昔お寺で家を建てるのは絶対に止めなさい」と助言してくれたり、
僕の声が出なくなったとき、行ったこともない家の墓地の様子を述べた後
「五つ並んだお墓の真ん中に、ちょっと長方形のお墓が有るはずだから……」と、驚くほど正確に言い当てたりETC.
とにかくOさんには何度となく助けてもらった。
そしてM夫妻と対面したOさんは、「目覚ましが鳴る」という一言だけで次のようなことを淡々と述べた。
「お家はメインの通りから1本中に入ってますよね?」
驚いたような声で「えぇ? はっ入ってます入ってます!!」と何度も頷くM婦人。
「 周りで大変なことが沢山有ったはず」……
Oさんからそう言われたM婦人は、今度は怪訝そうに「えぇ? 別に無いですけど〜!!」と言う。
その会話を聴いていた僕はゾクゾクと鳥肌が立った。
何も無いどころではない!!
全く気が付かないM婦人にたまりかねた僕は、もう嫌になるほど聴かされた話の一つを振ってみた。
「ほらほら、家の前で誰かが首をつったとか言いよったやん……」!!
「あー! 10Mくらい離れた柿木でね〜!!」
するとOさんは「それだけじゃないでしょう??」と静かに言う。
側で黙って聴いていたMさんが「おまえとなりの○○さんも〜……」!!
「あー! あそこはお父さんが井戸に飛び込んで亡くなった後お母さんも子供達も病気で〜・・・・・ あっ、そう言えば〜……
××さんも焼身自殺したし△△さんも〜……!!」
次から次へと恐ろしい出来事を語るM婦人!!
家の前の柿の木で…というだけでも尋常じゃないのに、周りでそれほど沢山の事が……!!
ゾクゾクしながら会話を聴いていた僕は「目覚まし時計っていうのは何かを象徴してるの??」と恐る恐るOさんに尋ねた。
「いや、それだけじゃなくて、いろんなことが起こってるはず。 その辺りで写真でも撮ったら必ず何か写るでしょう。」
するとそれまでとは明らかにトーンの違う声でM婦人が
「鬼門の位置にトイレが有るんですけどそんなのも関係有りますか??」
「そういうのは体に来ます。」
「体っていうのは別に心当たりはないけど〜……」
すると再びMさんが
「おまえはどうしてぴんとこんのや? お父さんもお兄さんも若くして亡くなったし、お姉さんだって癌になったし、おまえやって大変な手術を受けたのはつい最近のことやないか!!」
「あっ……!!」
みんなが言葉を失った。
翌日M婦人は、とりあえず土地の4隅や玄関の両側、そして鬼門の位置にあるトイレなどに盛り塩をした。
そしてほっとして寝っ転がったその時・・・・・
とんとん とんとん……
誰かが戸を叩くような音が聞こえた。
しかしその音は玄関からというわけでもなく、まるでその辺の空間から聞こえてくるようで、まったく尋常なものではなかった。
「おっお母ちゃん、何か音が……!!」
「えぇ? 何にも聞こえんよ!!」
そして気のせいだったかと思い直したM婦人は、仕事に行く時間が迫ったのでトイレに入った。
ところが・・・・・
ばたん・・・・・
今度は相当大きな、しかし所在のはっきりしない音が・・・・・
しかもそれは、おそらく他の人には聞こえない音だったろうと、彼女は直感的に思った。
その時彼女は初めてすぐ近くに「何か」の存在を確信し、事の重大さを悟った。
「お母ちゃん、やっぱりいろんな音がする……」
「あー、この家は私が嫁いできた60年前からいろんな音が聞こえたりするよ!!」
「お母ちゃん怖くなかったの??」
「もう慣れたから別に!!」
そういえば、M婦人は幼い頃からよく独り言を言ったり一人遊びをしたりすると言われたらしい。
誰も居ないのに、突然誰かと会話をしたり笑ったり……
いったい彼女は誰と話してたんだろう!!
生まれたときからそんな環境で生きてきた彼女は、家の中でおびただしく起こっていたであろう怪現象に、今まで全く気づかなかったという!!
しかしOさんの指摘で、実家とその周りの尋常ならぬ状況に改めて気づき驚いた彼女は、Oさんに助言してもらったとおり、これからちゃんとした処置をしようと堅く決意した。
周りの大切な人達のためにも。
そして僕はこれを書いてる間、背筋がゾクゾクしっぱなし!!
このことを明るみに出すことが、浮かばれない魂の供養に少しでも寄与したことになるように今はただ祈るのみです。
どうかそうでありますように。
どうかそうであってください。