空を塞ぐ闇の蓋が開いたところで、やちるは剣八の気配がざわりと騒いだのを感じた。しがみついている背中からは、剣八の表情を確認することはできない。しかし、やちるは確信していた。
獲物を見つけた虎は、こんな感じではないだろうか。虎を知らないやちるは思う。静かに沈む意識と、裏腹に猛る悦び。肌のすぐ下に荒れ狂う、餓えた本能。
「……剣ちゃん」
やちるは囁く。どうした。剣八が応えた。それにほっと息を吐く。微かな息の音が遥か背後に流れ、剣八に聞こえないことにまた息を吐く。
「あの空の下にみんないるよ。藍染さんも、ギンちゃんも」
そうか。剣八が明らかに笑った。やちるはしがみつく手に力をこめる。離れないように。離さないように。