【※重要なお知らせ】Alfoo有料化への移行に伴う重要なお知らせ。
no title [side B]


響く
 咆哮が響いた。
 それは微かだったけれど確かに狛村の声だった。射場は破面と斬り結びながら、ちらりと視線をその方向へ向ける。もちろん、見えはしない。周囲は漂う霊圧で煙っている上、おそらく狛村のいる場所は区画一つ向こうだった。
 それでもその声に含まれる、身の切られるような響きは分かった。
「……隊長…………」
 射場は呟く。
「おぉたんか」
 東仙と。
 射場は刀を振るった。骨の砕ける音が呟きを掻き消した。
2007/10/22 (Mon)



咲き誇る花
 言霊を唱えずに打ち出したそれを、松本は自分と同様に詠唱破棄した鬼道で弾いてみせた。ほう、と藍染は目を細める。彼女を見縊っていたかな。再び手を伸ばし、するりと藍染はその向きを変える。
「なかなかゆっくり殺させてくれないね」
 間近に迫っていた日番谷が舌打ちするのが見えた。可愛らしい顔をしかめて、日番谷が防御の体勢に切り換え始める。間に合わないか。そう思いながら藍染は炎の塊を打ち出した。日番谷はそれを纏う氷だけで空に受け流し、くるりと宙を回って屋根に降り立った。それを視界の端で確認しつつ、藍染は再び松本に振り返る。
 松本は前へ踏み出すところだった。
 目が合う。
 自分が笑うのと、松本が足を止めるのと、同時だった。次の瞬間、松本の、一歩分前にある屋根瓦がぐしゃりと潰れる。
「良い判断だ、松本君」
「……あんたは、遊んでいるようね」
 女にしては低い、しかし普段は甘い響きの声が、今は固かった。急に動きを止めたせいで大きく波打った山吹色の髪が、声の響きに似付かわしくない柔らかさでふうわりと華奢な肩に落ち着く。このようなものを、完璧な美しさかもしれないと思う。だが、その隙のなさが、つまらない。


 藍染は、何か足りないものを好んだ。


 光も慈雨も嵐も、己の姿も未だ知らない、しかしこれから全てを手に入れる綻び始めた蕾。
 水分を吸い上げる力をなくし、色は褪せ、後はただ崩れていく己を覚りながらも、なおも咲き続ける枯れゆく花。
 夜にしか咲けない花。
 風に吹き飛ばされそうな断崖の花。
 日陰の花。
 病んだ花。
 太陽に顔を向け、背筋を伸ばして堂々と咲き誇る大輪の花に手を伸ばしたことはない。危うさも滅びも感じられない、ただ奥に秘めた蜜の味だけが辛うじて興味を引くような、艶やかな花。世界に愛されているその態に、藍染は何も感じなかった。
 実力を知っていても手元に置こうとは思わなかった、目の前の女に対するのと同じに。


 松本は険しい目をこちらに向けていた。離れた雛森を気にしているようだが、見ることはしない。その余裕はないだろう。藍染は、ちらりと雛森に目を向けてやる。松本の肩がぴくりと動いた。気にすることはない。視線を戻して藍染は笑いかける。先に、君が死ぬ。
「……あんたは、いつからこの計画を立てていたのよ」
 松本が尋ねてきた。抑揚のない声。藍染は目を細めた。
「君がまだ存在すらしていない頃からだ」
 溜息混じりに簡単に答えると、松本はさらに眉をひそめた。その様子に焦りはない。
「東仙や、ギンは、最初から?」
 時間稼ぎではないようだ。藍染は微笑む。
「なぜ?」
「あたしが知っていた二人は、雰囲気や様子をがらりと変えたことなかったからよ」
 藍染は一瞬だけ視線を日番谷と雛森へ向け、縛道の番号と名称だけを囁いた。瞬時に日番谷が雛森の前に移動する。
 雛森が立ち上がるのと同時に、五本の光の槍が二人を囲むように降り注いだ。その隙間から炎の玉が真っすぐに飛んでくる。藍染はそれを手で軽く払い落とし、目を瞬かせた。
「振り向くな! ただの縛道だ!」
 爆音に負けず、日番谷がこちらを睨みながら松本に叫ぶ。その背には、哀しげに、しかし真っすぐにこちらを見つめる雛森がいた。斬魄刀を構えている。やはり、そうか。藍染は自然と口元が綻ぶのを感じた。あの火の玉は、君の技の一つだった。
 視線を松本に戻すと、彼女はじっとこちらを睨んでいた。
「……気付くわけがないから、気にすることはない。君が彼らに出会う前だ。要を引き入れたときは、君はまだ生まれてすらないだろう。ギンは……実際に働いてもらうようになったのは入隊後だが、誘ったのは彼が学院に入学する前だしね」
「…………前?」
 確認するように尋ねる声の調子は変わらない。無表情の顔。硝子玉のような蒼い瞳。藍染はゆっくりと答える。
「君達の入学試験の朝だ。君も試験会場にいたのだろう。覚えているかい。私が彼を教室に連れていった」
 すとんと、静寂が落ちてきた。
 時間が間延びしたような、現実には一秒もない中で藍染は松本の変化を見ていた。松本の柔らかそうな唇が歪んで、少しだけ横に引き伸ばされた。しかし蒼い目は開かれたまま、藍染を通り越し、その後ろを、虚ろな空を見ていた。
「…………よく、覚えてるわ」
 力の抜けた、感情の読めない口調。
「試験会場に、あんたに連れられて現れたのは、血塗れになったギンだった」
 ふふ、と。突然、松本が笑いだした。肩を揺らし、俯いて松本は笑う。
「ふふふ、そう、あの日…………はは、やぁね」
 髪が顔を被い隠している。
「あたしが、知らない、時じゃないのよ……いくら聞かれたって、話しようがないわ。そんな大事を知らないで、特別な関係なんてあったもんじゃないわ。そうじゃない?」
 笑いを堪えているのか、違う何かを堪えているのか、松本の声は一層低く、震えていた。髪の隙間からわずかに見える口元は微笑の形をしている。
「……あたしを殺すのは、骨が折れるわよ?」
 松本が囁く。藍染は何も答えずに松本を眺めていた。
 危うい蜜の香りを微かに感じた。
「殺られてやる気はないわ。だって、ねえ」
 松本が顔を上げる。
「あたし、あんたを倒さないといけないんだもの」
 華やかな笑みが浮かんでいた。炎のように揺らめく光が、細められた瞳の奥にあった。
「心情かい? 立場かい?」
「立場上よ」
 溢れだす霊圧で松本の髪が上へ揺らめき始める。その様は金色の炎だ。藍染は眩しさを感じて目を細める。揺らめきはこちらに向けられ、肌はちりちりと熱を感じている。
 大輪の花が、炎の花弁を揺らめかせていた。

 自身の炎で燃えつきて、崩れ落ちる様を見たいと思った。
 その直前にあるだろう、最期の輝きを見たいと思った。

「……初めて、君に興味を持ったよ」
「それは光栄ね」
 艶然と松本が刀を構えた。
2007/09/17 (Mon)


ふたりの関係
 日番谷が、乱菊に目を向けた。
 それは一瞬のことだったけれど、雛森は日番谷の目の奥を見て焦る。だめだよ、シロちゃん。制止しようと雛森は口を開くが、からからに渇いた咽喉に言葉がひっかかる。いや、声を出せる時間はなかった。瞬間的な意識の中で雛森は日番谷を止めようとする。だめだよ。そんな目で見たらだめだよ。

 そんな目のままで“藍染隊長”を見たらだめだよ。

 煌めく氷粒がゆっくりと落ちていく向こうで、日番谷の碧の目は揺れていた。揺れたまま、日番谷は“藍染隊長“に視線を戻す。雛森もつられるように“藍染隊長”を見上げる。
「ほら……」
 ようやく、声が漏れた。
 “藍染隊長”の笑みは確信に満ちていた。薄い唇が引き伸ばされ、裂け目のように開いている。こちらを見下す瞳には、何も映らない。
「……やはり、君達には何か、あるのかな。松本君」
 重々しい、何かを宣告する響き。尋ねてなどいない、ただこれからのことを告げているだけの言葉。雛森は乱菊の背中越しに“藍染隊長”を見る。
「…………おい」
 張り詰めた空気が揺れた。
「てめぇは、何を、言いたいんだ?」
 日番谷が低く押さえられた声で尋ねる。その言葉に“藍染隊長”が苦笑した。ふっと過去の表情に見えて、雛森は震える。
「途中から割り込んできたのに説明を求めるとは、図々しいね。まあ、いい。簡単に話してあげよう」
 日番谷が“藍染隊長”を睨み付けたまま、じりりと脚をわずかに動かし、前後に広げて腰を落とした。そんな日番谷を見て、雛森は下唇を噛む。そして無理に震えを押さえ込み、静かにそっと、片膝を立てた。後ろ足もしっかりと指で瓦をとらえる。そうして体の横で伏せている刀の柄を握り締めた。昔からの、緊迫した状況で“藍染隊長”の話を聞く体勢。おかしくはない。大丈夫。おかしくなんかない。雛森は息をつめる。
 一瞬、“藍染隊長”と目が合った。全て覚られている気になって、雛森は視界が揺れるのを感じる。ああ、でもそれも昔からだ。雛森は思う。そう、昔から。
「……人と人との関係は、はかないほどに流動的だね。刻一刻と変化する。君はよく知っているだろう、日番谷隊長。君の出世に伴い、どれだけ人が君を疎んじ、媚びへつらい、憧れ、嫌悪したか。離れ、近寄り、縋り、突き放したか」
 “藍染隊長”が微笑む。
「関係を……人と人の間にある距離と質を変えないでいるのは、実はかなり難しい。誰にだって感情がある。欲がある。常に変化するそれらに従属している人々は、変化に伴い距離を、立場を変えていく。それは自然なことだ。そうだろう?」
 雛森は視界の端にいる日番谷を意識した。自分達の立場は大きく変化した。呼び方も、それにつれて変えた。
 しかし、距離は、質は変わっただろうか。変わっていたのか。気付かないほど、緩やかに、穏やかに?
「変えないためには、その意識が必要だ。繊細に、忍耐強く、注意深く、冷静に、しかも、互いにそれを行なわなくてはならない。自分一人の意志では、まあ、無理だろうね」
 “藍染隊長”がこちらを見下ろしている。目の前の、ぴくりとも動かない乱菊を、飲み込みそうな暗い目で見ていた。青い空を背にした、穴のような目。
 乱菊は、どんな顔をしているのだろう。雛森はかすかな大気の揺らぎにも波打つ乱菊の髪を見つめる。山吹色の、少し癖のある髪はこんなときも輝いているけれど。
「学院の頃から君達を知っているけれど、君達は常に一定の関係にあった。人気の級長と厄介者の首席から、姉御肌の艶やかな副隊長と人から距離を置かれがちな隊長へと立場は大きく変化したというのに。近寄りはしない、かといって離れることはない。接点は少ないのに互いの状況を知っている。少ない会話にはわずかに慕わしさが滲み出る。遠く離れ、しかし目を離さない。何だろうね。この、同期というには微妙な距離感は」
 日番谷が動く気配がした。動揺しているのだろうか。雛森もまた、ばくばくと脈打つ心臓を感じて胸を押さえた。そう、改めて言葉にされるとよく理解できた。以前、同期だというのに仲良くしないのかと乱菊に尋ねたことを唐突に思い出す。乱菊は、曖昧に微笑んだ。それを見て、あの頃の雛森は、仲良くなかったのかな、とだけ思ったのだった。
 乱菊が曖昧に笑うなんて、他に見たことはないのに。
「これが、私が君を疑う理由だよ。松本君」
 “藍染隊長”が囁くように、告げた。
「話してはくれないのかな」
「……親しかったら、どうするのかしら。あたしを殺してみるのかしら。それとも吉良のように利用させようというのかしら。それとも、朽木にしたように」
 笑っているような声。
「殺せ、とギンに突き出すのかしら」
 乱菊が刀を構えた。片足を引き、腰を落とす。
「……たとえ、あたしの知っていることが、あんたの知りたいことだとしても、そうではなくても」
 乱菊がゆっくりと、言葉を噛み締めているように言う。
「あんたに話すことなんか、何一つないわ」
 遠い空に浮かぶように尖塔に立つ“藍染隊長”の姿は遠い。それなのに雛森は、“藍染隊長”の頬がぴくりと動いたことをはっきりと感じた。
「そうか。残念だ」
 “藍染隊長”がゆっくりと腕をこちらに向ける。乱菊は動かない。雛森は刀を握り締めた。
 かちり、と音がした。
2007/08/18 (Sat)


無意識
 ――……シロちゃん

 振り向いた雛森の唇がわずかに動き、日番谷は声もなく呼ばれたことを理解する。思わず、ぎりりと奥歯を噛んだ。
 雛森は力なく屋根の上に膝をついていた。かろうじて握られている刀は重たげに伏せられいる。こちらに向けられた顔は青白く、見開かれた瞳は焦点があまり合っていない。その雛森の前には、庇うように立つ松本の姿があった。左腕の黒衣は裂け、白い肌の細い腕と、流れる赤い血が見えた。
 そして、相対する尖塔の先に、あの男が、いた。
 薄く笑って。
「藍染……っ」
 叫ぶと同時に寒気がして、瞬時に日番谷は言霊を吐き捨てるように唱えた。すでに四肢を絡め取ろうとしていた気配が乱暴に断ち切れる。次の瞬間、目の前に網のような呪が展開した。直前で止まり、顔を上げると、藍染が満足気に微笑むのが見えた。
「さすがは天才少年だ、日番谷隊長。良い反応だ。この程度の縛道では無理かな」
 以前より冷ややかな声色で、藍染が言う。
「あれから鍛練したのだとしても、この長くはない期間によくここまで成長したね。君を隊長に推薦した私の眼は、間違いなかったということか。嬉しいよ」
「……俺を推したことを後悔させてやる。てめぇの相手は、俺だ」
 息を整えて、日番谷は背の柄に手をやる。鞘がゆるりと溶けるように消え、押し殺していた霊圧が噴き出したのを感じた。空気中に光が散らばり、目の前の繊細に編まれた結界が砕けて崩れていく。
 光の向こうで、藍染が目を細めた。
「霊圧で、空気中の水分だけでなく呪まで凍らせるか……こんなときまで君は本当に、哀れなほどに優雅だね」
 日番谷はきつく眉を寄せた。
「うるせぇ……松本、よく耐えた。雛森を連れて下がれ」
 一度も振り向かず、反応すら示さずにいる松本に、日番谷は低く声をかけた。松本の顔は髪に隠れている。わずかに覗く横向きの口元が微笑んだようだった。優美な曲線で描かれた顎の先から、雫が落ちた。一滴、また一滴。ふいに風が山吹色の髪を巻き上げ、瞬間、厳しい眼差しが露になった。日番谷は眉間の皺を深くする。滴り落ちるそれは、涙ではなかった。常に明るく、涼しい顔でいる松本のその顔を、汗が伝っていた。
 藍染が小さく笑った。
「それは無理というものだよ。日番谷隊長、分からないかい。彼女がどれほどの圧力に耐えているのか」
 藍染はまた、穏やかなのに耳障りな声で笑うと、手を軽く払った。
 いきなり、きた。
 全身の骨が悲鳴のように軋み、日番谷は全力で座り込むのを堪えた。呻き声を飲み込み、歯を食い縛る。耳元で大気が激しく震える。地の底から何者かが叫んでいるような響きが振動に混じり神経を逆撫でする。
「それに、私はまだ松本君と会話中でね……とは言っても、何も知らないということは本音のようだ。しかし、『何』について彼女が知らないと言っているのかまでは聞いてなくてね。それを尋ねているところだった」
 視線を動かすと、霊圧のために歪んで見える視界の中で、潰されながらも体を起こそうとしている雛森と、顔を上げたままの松本の姿があった。
「もし、彼女が本当に『全て』を知らないのなら……無駄な、つまらない時間だね。私は総隊長のもとに急ぐことにするよ。君らは何も気にすることはない。優しく、殺してあげよう」
「藍染……っ……藍染っ、てめぇ……」
 睨み上げると嘲笑うように藍染は口角を上げていた。日番谷は無理に腕を上げ、刀を構える。
「うるせぇっ」
 斬り捨てるように横に払った。
 押し潰そうとしてくる強大な力を、冷気が一掃した。しんと音が消え、ぱちぱちと凍り付く微かな音が耳に届く。急激な霊圧と温度の変化に、再び空中に微細な氷粒が舞った。光が煌めく視界の端で雛森が肩で息をついていた。松本が一歩よろめく。しかし顔は上げたままだ。
 日番谷は、藍染を見た。
 何も映していないような暗い目で笑う藍染を、見上げた。
「日番谷隊長、君の意見を聞こうか」
 まるで、空に現れた穴。
「松本君とギンの関係を、君はどう思っていた?」

 無意識に日番谷は、視線を動かして松本を確認した。
 横顔に表情はなかった。
 視線を戻すと、藍染はゆっくりと歪んだ笑みを浮かべた。
2007/08/02 (Thu)


 吉良は知っていた。市丸ギンという死神を止めるには、自分の力はあまりに足りない。全力で進路を塞ごうとしても、市丸は軽々と横をすりぬけていくだろう。それはおそらく風のようで、目で追うことすら難しい。
 だから。
 吉良は呆然と見つめる。
 だから、これは市丸の意志なのだろう。自分の呼び掛けに身を翻す直前で立ち止まった市丸に、言葉が出てこない吉良はわずかに開いていた口を固く結んだ。長々と続く黒光りした屋根瓦に、薄い影が落ちていた。銀色の髪が揺れ、市丸の顔を覆う。影も、姿もどこか薄い。青い空が透けそうな市丸がそこに、いた。
「久しいなあ、イヅル」
 静かな声。
「ボクに言いたいこと、あるやろな。せやけど……堪忍な」
 顔を向けた市丸の、能面のように表情のない笑みが微かに崩れる。吉良は無言でそれを見ていた。
 微かな、はかない笑みだった。
「急がな、間に合わへん……後に、聞く。必ずや」
 市丸からは電気を帯びたような張り詰めた霊圧が流れている。それに触れる表皮はちりちりと痛い。全身の毛が逆立つ。
 それなのにどこか、この言葉が当てはまるなら。
 市丸は、泣きそうに見えた。
 吉良は凝り固まった筋肉を無理矢理に動かして口を開いた。ひきつり、歪んで、自分こそ泣きそうな顔をしていると思いながら、吉良は声を絞りだす。
「……はい。後で、必ず」
 それ以上は、口を開けていられなかった。溢れそうな何かを堪え、吉良は唇を引き結んで頷く。市丸は小さく頷くと、瞬時に空に溶けた。去るその背すら追うことはできず、吉良は立ち尽くす。
「……市丸……隊長」
 近づく市丸を感知できたこと、そのことが何よりも市丸の意志によるものだということに気付かされ、吉良は俯く。見せたこともない顔をしていたのに自分の前に立ち止まった市丸を思い、吉良は固く目を閉じた。
2007/07/19 (Thu)



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