檜佐木は空をみあげていた。
東仙が消えた空を、ただ無言で見上げていた。その隣では狛村もまた何も語らず、空を見上げている。
空は、暗い。
暗い深い穴となっている。
「……市丸が……」
独り言のように声が漏れた。はっとして檜佐木は口を閉じて狛村を見る。狛村が促すように軽く頷いたから改めて口を開く。
「市丸が言っていたのは、正しいのでしょうか」
「……どうあっても、ここにいることは許されない……か」
「はい」
ボクも東仙さんも、ここにはもういられへんやろ。
突如現れた市丸はそう言って、東仙の後頭部を殴打した。崩れ落ちる東仙を片手で支え、抱え上げた。
異形の腕で。
狛村さんが許しはっても、それでもそれは許されへんよ。ほな……また。
笑う市丸は、異形の者にになっていた。
「正しいか、正しくないかではない」
狛村は空を見上げたままだ。
「ただ、市丸が、許していないのだろう」
檜佐木は再び空を見上げた。