貴方が幸せである方へ歩んでください。それが悲しい連鎖を途絶えさせます。それが側から見て悲劇だとしても、貴方が最良だと思える方へ向かってください。貴方の満足出来るところへ進んでください。それが正しい道になると私は感じます。別れや出会いが再び待っているかも知れません。失うものや得るものが再びあるでしょう。あるべき場所へ。パズルのピースが綺麗に収まる場所へ。何が起きているのか私にはよく分かりませんが、心地よい場所、それが答えを知っています。貴方を執拗に襲う災いがそう知らしめます。

私は何と向かい合い何を眺めているのか分からなかった。目の前は様々な記憶がフラッシュの様に映し出され、私はそこへ飛び込もうとしている。鏡の中へ…。向こうに行けば安息がある。何故かそう感じたから。雄大なその有様を感じたい。こんな世界での出来事なんて全て忘れて。何故、何故こんな事になったのか知らないふりをしている。ただ呼ぶ声がして、そちらへ向かおうとしているのである。どうしたいとか、この世界に求められるだけの希望がもう無い。窒息するほどに酷く絶望している。全て無意味だった。

打ち寄せる白い波だけがうっすら見える。あとはザザザァァーと満ち引きする潮の音だけである。鋭く冷たい風が沖からずっと吹いてくる。砂浜に座り込む、吹きさらされる…。ただ感じるものに支配され、内に渦巻いていた何かは風に削られ薄れてく。月はない、薄く雲が覆う。真っ暗な沖で手招きする無数の手があるような気がした。
私はあそこへ帰らなければならない気がしている。待っている、たくさんの誰かが待っている。悲しみも苦しみも全て真っ暗な沖へ流れていくし、酷く優しい世界が向こうには在ると夢想してしまう。そして待たれていると。
何も見え無いが、呆然と沖を何時迄も眺めてしまう。急かされているようにも感じるのである。ここへ来てやっと息ができるのである…。呼吸と共に寄せては引く、そのリズムが…私の全てだろう。

悲しみを拾っては重ね編み上げ、風に乗せて流しては繋げていく。渦巻く哀の糸は絶えることなく、いずれ世界を覆う空になる。星を守る膜になる。

幸せも不幸も苦しくて、何もさざ波も立たないままで眠り消えていきたい。幸せには不幸を、不幸には幸せを、当てがい。フラットラインに沈んでいく。分解され散り塵となり、霞となり跡形もなく。空想の何もない色もない空間に精神を放り投げ、空間ごと、私は消える。もう過ぎたこの命、無意味な非存在へと変えていく。生きた証なんて何の勲章にもならないからもう要らない。