修学旅行の部屋割りが決まったあとで、その声は上がった。
「部屋はそれでいいけどさ、バスの席はくじ引きにしねェか?」
「賛成!」
「いいと思う!」
宿の部屋は、話し合いで決めた。普段つるんでいる者同士が同部屋になっている。4人部屋のときはルフィ、ゾロ、サンジが一緒で、2人部屋だとルフィとゾロ、サンジとおれだ。どう分かれてもかまわなかったけど、サンジが「じゃあおれ、ウソップと」って言いだしたから、そうなった。
バスの席について意見が出たのは、たぶん、寝る部屋とまでなると遠慮があったんだと思う。女性の先生もほとんどいない男子校の宿命なのかもしれないが、実はこっそり、サンジにはファンが多い、らしい。ついでに言えば、ゾロも。――いや、ゾロの場合はファンと言うより、わりとガチみたいだが。いやいや、マジでお前ら、それでいいのか。
とにかく、さっき声を上げたのはおそらくサンジのファンで、同調しているのはふたりのどっちかの隣を狙っている奴らだろう。
「へー! おもしろそうだな!」
ルフィがそう言ったので、バスの席はくじ引きで決めることに決定した。
クラス全員分の名前を書いた紙が、箱に入っている。クラス委員がその中から1枚を引くと、キャベンディッシュの名前があった。次に、キャベンディッシュが箱から1枚を引く。書かれてあった名前はバギー。それぞれ違った意味で派手な男だが、おれはふたりが話しているのを見たことがない。案の定、どっちも困ったような顔をしている。
半ばを過ぎた頃に、クラス委員がサンジを引いた。まだペアの決まっていない者が固唾を飲んで見守る中、サンジはゾロの名前を引いた。
「えー……」
「代わり映えしねェじゃん」
文句が静かに上がるが、バレバレながらそれが主目的とは知られたくないのだろう、やり直しを求める声は上がらなかった。そこから先は盛り上がりもなく、みんな粛々とくじを引いていった。
「じゃあさ、今度は2日目のバスの席!」
懲りない誰かが提案する。
同じことを繰り返して、今度は最初のほうでゾロがサンジの名前を引いた。
3日目のバスも、ゾロがサンジを。4日目はサンジがゾロを。
「おめーら、ほんっと仲いいなー!」
クラスの微妙な空気をものともしないルフィがあっけらかんとそう言う。ゾロはいつもよりちょっとだけ不機嫌そうな様子で、サンジはほんの少し落ち着かない。とにかく、ゾロとサンジは修学旅行中、バスではずっと隣同士だってことが、決まった。
剣道部のゾロが部室に向かい、家の近いルフィが自転車で走っていったのを見送ると、サンジとおれは駅へ向かった。時折追い越していく同級生が、おれたちに声をかけていく。
「縁っていうか、運っていうか。おめーら、やっぱすげェな」
ふたりとも、不正なことなんてこれっぽっちもしていないのだから。
「ま、よかったんじゃねェの。あいつ、あれでけっこうやきもちやくだろ」
おれが言うと、サンジは「……そうだけどさ」と俯く。
ゾロとサンジは、お互いのことが好きだ。おれはそれをだいぶ前から知っていた。おれだけが知っている状態が長く続いて、最近になってようやく、気持ちが通じ合った。サンジが2人部屋の相手におれを選んだのは、微妙な男心ってやつだろう。両想いだってわかる前だったら、サンジはきっと、ゾロと一緒の部屋になりたがっただろうと思う。
「部屋も、いつでもゾロと代わるぜ。ゾロは絶対、お前と一緒がいいだろうからなァ」
「……頼むからウソップ、一緒に寝てくれ」
「おい。それ、ゾロの前で絶対言うなよ。誤解されて殺される」
サンジがおれを指名したときの、ゾロの一瞬の表情をおれは見逃していない。そこには完全な殺意があった。怖い! と叫ぶ前に表情がもとに戻ったから、誰にも訴えることはできなかったんだけれども。
まあ、ずっとそっと見守ってきたおれからすれば、怖いのもかわいいモンだ。ゾロとサンジが一緒にいるのはすごく自然で、そんでもって最強で。運も味方につけてんだから、やっぱりふたりは、ふたりでいるのがいいと思うんだ。
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まったくネタが浮かばなかったお題その1。 かなりやっつけな感じ。