ナイフを持ったまま、彼はじっとこちらを見つめていた。そんなものを見せられなくたって、彼の言うことは何でも聞くつもりでいる。あなたの好きにすればいい、まるごと全部食べてくれればいい、そう思っている。
「皮つきのまま素揚げにするか」
ナイフを下ろして彼が言うと、
「海獣と甘辛く煮たのがいい」
もう一人の男が酒を煽りながら強請った。
「だーれがお前の好みなんかに合わせるかよ」
そう言いながら、彼は煮物用の鍋を取り出した。
まるごと全部おいしく食べてくれるなら、ふるえるほど幸せだ。そしてきっと、彼はそれをちゃんと知っている。
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小芋の語り (「かたり」じゃねェか、という苦情は受付終了しました)
自分が書いたのだったかもしれないけど、鮭物語という言葉を、鯉物語と見間違えて。
ああいいねこいものがたり、と思ったという話です。鯉どこいった。

