生まれ故郷の町にある総合病院の一室。
相変わらず約30秒周期でチェーンストーク呼吸を繰り返す親父は、無呼吸状態から解放される度に、苦しそうに頭を振り手を動かしながら「ほ〜」「ほ〜」と救いを求めるように声を出してる。
その声が、時々「けい」とか「おるか?」とか、そんなふうに聞こえて、はっとする。
もう昨夜からずっとこの状態が続いてる。
ただ病院のスタッフが声をかけてくれると「はい」と、家族に対するときとは明らかに違う返事をする。
あの親父が「はい」なんて素直に返事をするのもまた少し寂しい。
入院以来ずっと付き添ってるお袋は、僕がここに止まった昨夜は二日ぶりに4時間ぐっすり眠れたという。
僕は親父の呼吸に耳を澄ましながら結局一睡もしなかったけど、不思議なことに全く疲れを感じない。
今回お由美丼やテルを始め多くの皆さんのおかげで帰郷することができて本当にありがたかった。
こんな親父をここに残して行くのは忍びないけど、週末も予定がびっしり入ってるので、間もなく高知に向け出発する。
今の親父に理解してもらえるかは疑問だけど、親父の手を握って次のような言葉を伝えた。
「お父ちゃん、目が見えん息子が生まれてほんまに悔しくて残念な思いをしたこともあったと思うけど、ここまで育ててくれてほんまにありがとう。 お父ちゃんがどんな状態になっても、僕はお父ちゃんをずっと誇りに思うちゅうきね。」
親父は苦しそうな、しかしはっきりしたこえで「うん…うん…うん」と言いながら何度もうなづいた。
それからお袋が「佳と一晩一緒におれて良かったね」と言うと「ほんまに良かった」と震える声で答えて僕達を驚かせた。
そして僕は、ついにこらえきれずにあふれ出した涙を拭いながら病室を出た。
読んでくださってる皆さん、こんな場でご心配をおかけして本当に申し訳有りません。
また明日から元気な堀内佳に戻りますので、どうか今日だけ大目に見てやってください。